幹からピョコッ!


 林道脇(りんどうわき)に立つ、一本の枯(か)れ木に穴が空いています。つい先ほどまで、キツツキがせっせと突(つつ)いていたような、真新しい穴が気になり、ここを通りかかる度に、キツツキがやって来ないかと、2時間ほどは待ってみるものの、これまで全て空振(からぶ)りです。

 この日もあきらめ半分で、腰(こし)を下ろした数分後のことです。周辺から「キョッ、キョッ」と甲高(かんだか)い声が聞こえ始めて間もなく、葉隠(はがく)れになった枝にキツツキらしい鳥が透(す)けて見えました。その後どうにか見通せる場所に出てきて、大あくびを一つ。これは緑色のキツツキ、アオゲラです。

 アオゲラは、ハトよりもやや小さいキツツキで、日本だけに生息する日本特産種です。よく茂(しげ)った林を住み処として、主に木の中にいる虫などを食べますが、時には木の実も食べる多用な食性を持っています。

 現れたアオゲラは、予想どおり穴の空いた枯れ木が気になるようで、この周辺から離(はな)れず、あちらこちらを移動しながら、枯れ木に飛び移るタイミングを計っています。

 「キョッ!」鳴き声と共に枯れ木に飛び移ったはいいものの、太い幹の向こう側で全く様子がわかりません。数十秒後、上の写真にあるように、こちらをチラッとのぞき込(こ)んでは引っ込み、隠れたかと思うと、また別の場所からピョコッと頭を出す、これではまるでモグラたたきです。

 安全確認ができたのか、ようやく姿を現すと、忙(いそが)しく幹のくぼみをチェックして回ります。しかし、あの真新しい穴には立ち寄るどころか、全く関心を示しません。
 アオゲラは、そうこうしている間に、大きく斜(なな)めに傾(かたむ)いた幹の側面に移動し、身体をくの字に曲げたかと思うと、いきなり頭を突っ込みました。なんとこんな所にも穴があったのです。しかも、奥行きがかなりある様子で、何度も出入りを繰(く)り返しています。

 これは面白いことになってきましたよ。ひょっとするとこの穴が本名で、ともすれば営巣するかもしれません。今回は、オスだけでメスの姿は確認できませんでしたが、このオスがペアリングしていることを期待して、そっと観察を続けてみようと思います。

文責 増田 克也



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