ただ今、横断中


 通い慣(な)れた通勤路の道端(みちばた)で、上の写真にあるメスのキジが目に付きました。首を伸(の)ばして遠くを見つめるその表情は、何やら不安な面持ちです。おや、生け垣(がき)の中には2羽のヒナが見え隠(かく)れしていますよ。

 ここは片側一車線のアスファルト道路です。キジは道路の左側に連なるカイヅカイブキの生け垣に隠れ、時折、出てきては、しきりに道路の右側にある草むらを気にしています
 そうこうしている間に生け垣から、ヒナが次々に姿を現しました。1、2、3・・・数えると5羽もいます。それぞれが同じ方向を見つめて、中には声を上げているものもいます。

 その時でした、道路右側の草むらから、小さなものが飛び出しました。ヒナです。ヒナがもう1羽いたのです。卵から孵(かえ)ってすぐに歩き始める早成性のキジだけあって、しっかりした足取りで駆(か)けていきます。

 ところがどうしたことか、道路の中央にたどり着くまでに、くるっときびすを返して、再び草むらに戻(もど)ってしまいました。これまでも、道路を横断しようと、何度か挑戦(ちょうせん)したのでしょうが、どうしても渡りきることができないようです。先ほどから、親鳥や他の兄弟が見せた行動は、取り残されたヒナを呼んでいたのです。
 道路を渡(わた)った生け垣の向こうには鶏舎(けいしゃ)があり、親鳥はエサのおこぼれに与(あずか)ろうとヒナを誘導(ゆうどう)したのでしょう。
 
 その後、見かねたように親鳥が道路へヒナを迎(むか)えに行きましたが、親子で草むらに入ったまま出てくる気配がありません。この先どうなるのか気になるところですが、残念ながらここでタイムアウト・・・勤務時間が近づき顛末(てんまつ)を見届けることはできませんでした。

 この時季、普段(ふだん)では見られない、親子ならではの行動が観察できるチャンスです。みなさんも親子の野鳥が目にとまったら、そっと観察してください。きっと面白い発見があることでしょう。

文責 増田 克也



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