ホシハジロ再来す

 ヨーロッパなどで繁殖(はんしょく)し、冬にはインドや中国、日本などへ渡るカモの仲間、ホシハジロが、本校近くの円山川にやって来ました。全国的に数多く越冬(えっとう)するホシハジロは、大きな河川や河口付近ではよく見られますが、これほど上流まで飛来するのは希(まれ)なことで、私の記録では2008年11月に確認して以来、今回で2度目のことです。

 流れが緩(ゆる)やかな淀(よど)みに浮(う)かぶホシハジロに、車でそっと近寄ると、結構、近距離(きんきょり)で観察することができますが、やはり人間にじっと見つめられるのは居心地が良くないのでしょう、暫(しばら)くすると、少し首を傾(かし)げながら、慌(あわ)てる様子もなく、すーっと遠ざかって行きます。 
 その時です、突然(とつぜん)ホシハジロが振(ふ)り向きました。赤い目から放たれた熱視線は威嚇的(いかくてき)で、こちらが何か悪いことでもしたような気分にさせられました。

 それにしても、ホシハジロは、存在感があるカモです。ピラカンサの実のように真っ赤な目玉はもちろんですが、茶色く天辺が盛(も)り上がった頭の形は、時節柄(じせつがら)、七福神の福禄寿(ふくろくじゅ)に見えてきます。また、黒とグレーのツートンに塗(ぬ)り分けられた、身体とくちばしのカラーリングも、水に浮いているのが不思議に思えるほど重厚感に溢(あふ)れています。

 ホシハジロは、重たそうな見かけとは裏腹に、機敏(きびん)な動作も見せてくれました。川上から水面を流れてくる浮遊物(ふゆうぶつ)に素早く反応して、首を左右に振り、ひとつひとつ突(つつ)いては、食べられるものだけを選別して口に入れていきます。

 次に潜水(せんすい)を始めました。こんな無骨なカモが潜水するなんて、にわかに信じられないでしょうが、これがなかなか上手で、その様子を擬声語(ぎせいご)で表現するなら「ザブン!」ではなく「チュポッ!」という感じで軽快に潜(もぐ)ります。
 水に潜る姿を写真に収めようとしましたが、何の前触(まえぶ)れもなく一瞬(いっしゅん)で水中に消えてしまいます。それでも、観察するうちに潜る直前の間合いが掴(つ)めるようになり、アーチ型に身体を反らせて頭を水中に突っ込んだ瞬間(しゅんかん)をなんとか捉(と)えることができました。
 今回は、秒間7コマで撮影しましたが、次のコマには尻(しり)だけしか写りませんので、いかにホシハジロの潜水が、素早いものかを感じてもらえると思います。

 あれこれしている間に、ホシハジロの潜水に触発されたのか、近くにいたカイツブリまでもがダイビングを始めました。

 さあ、ホシハジロはこの地で越冬してくれるでしょうか。ここを通りかかる度に、赤い目をしたユニークなカモの姿を探して、つい川をのぞき込んでしまいそうな気がします。

文責 増田 克也



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