雲海展望台より臨む

 秋が深まり、今年も雲海が発生する季節になりました。標高555メートル、朝来山の中腹にある本校の雲海展望台からは、気象条件さえ整えば、このところ連日のように雲海が見られます。今週の“自然のページ”は、雲海展望台から臨む雲海の様子をお届けします。

 まず、上の写真をご覧ください。時刻は午前5時40分、東の空が随分(ずいぶん)明るくなってきました。写真の右手にある、なだらかな山容を見せるのは、この辺りの最高峰(さいこうほう)、粟鹿山(あわがやま)です。
 山裾(やますそ)には、夜間に発生した霧(きり)が、既(すで)に雲海となって押し寄せ、水墨画(すいぼくが)のような光景が広がっています。
 しかし、残念なことに、今朝は霧の層が薄(うす)く、雲海のコンディションはよくありません。それが証拠(しょうこ)に、点々と街灯の明かりが透(す)けて見えます。

 次に視線を左に移すと、北の方向には、鉄鈷山(かなとこやま)、東床尾山(ひがしとこのおさん)、西床尾山(にしとこのおさん)、室尾山(むろおさん)など、南但馬の山々が、盆地(ぼんち)を満たした雲海から、山頂部を突(つ)き出し、まるで浮島(うきしま)のようです。本校の建物は、この方向の眼下にあるのですが、未だ霧の中で欠片さえも見えません。

 その頃(ころ)、先ほどの粟鹿山は、霧とも雲とも区別がつかない、煙(けむり)のような靄(もや)が沸(わ)き立ち、山頂の電波塔(でんぱとう)を包み始めていました。早朝の山は、刻々と実に多彩(たさい)な表情を展開してくれます。

 ここで、茜色(あかねいろ)の空が色あせないうちに、 カメラを東から西へ順に振(ふ)り撮影し、その4コマ分をつなぎ合わせてパノラマ写真を作ってみました。盆地(ぼんち)が霧で満たされ、雲海になった様子がよくわかると思います。

 雲海展望台から見る西側は、金梨山(かなしやま)、大倉部山(おくらべやま)と近隣(きんりん)の山が続き、その手前には、近年“日本のマチュピチュ”として有名になった、竹田城跡(たけだじょうせき)が遠くに臨めます。
 今にも霧に呑(の)み込まれそうな竹田城跡の天守台を拡大すると、幻想的(げんそうてき)な光景を写真に収めようと訪れたカメラマンや観光客で溢(あふ)れかえっていました。

 そうこうしている間に、日は高く昇(のぼ)り、幾分(いくぶん)雲海が目減りした眼下には、本校の大屋根広場や生活棟、食堂棟の屋根が現れました。
 空がオレンジからブルーへ変わった雲海展望台を後にして下山をすると、月曜日には子どもたちを乗せたバスが到着(とうちゃく)する、本校の玄関口、エントランス広場は、未だ霧に煙(けむ)っています。ふり返った先にどっしりと腰(こし)を据(す)えた大屋根広場は、神々しい朝日に照らされていました。

文責 増田 克也



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