由来は色々


 暗い山際に、一株のギボウシが、木漏(こも)れ日を浴びて青白い光を放つように咲いています。腰(こし)をかがめて四方八方から観賞した後に、ふと考え込んでしまいました。「これはいったい、何ギボウシだ?」葉っぱの形から、オオバギボウシでないのは明らかですが、だからと言ってコバギボウシとも違(ちが)うように思います。
 ギボウシの仲間は国内に自生するものが30数種、それにホスタと呼ばれる園芸品種もたくさんあるため、名前を特定するのは大変難しいのです。実際、このギボウシも、どこかの庭で栽培(さいばい)されていた園芸品種が、何かの拍子(ひょうし)に飛んできたものかもしれません。しかし、いずれにしても、夏の花であるギボウシが、今ごろ見られたのは少し得をした気分です。

 ところで、このギボウシという聞き慣(な)れない名前は、どこから来ているのでしょう。早速調べてみると、橋の欄干(らんかん)などの先端(せんたん)に付けられる、丸餅(まるもち)のような飾(かざ)りを、擬宝珠(ぎぼうし)というらしく、これとつぼみの形が似ていることが、名前の由来になっているそうです。
 私は、開いた花の形がどことなくチューリップハットに似ているので、頭にかぶる帽子(ぼうし)に関連があるのだろうと勝手に想像していましたが、全くの見当違いでした。

 ギボウシの近くには、ミズヒキも咲いていました。咲いていると言っても遠目には、赤い針金が延びているような、花なのか何なのかよく分からない、不思議な容姿をしています。
 一般に「ミズヒキ」というと思い浮(う)かぶのは、祝儀袋(しゅうぎぶくろ)などに使われる紅白の「水引」です。植物のミズヒキの名前は、祝儀袋の水引とカラーリングが似ているところから付けられたらしいのですが、赤色は見た目どおりですぐにわかります。では、白色はどこにあるのでしょう。
 白色は花の裏側(うらがわ)に隠(かく)れているので普段はよく見えませんが、このように花が開くと、紅白ともにハッキリと確認することができます。

 この日は、花期が終わりに近づいた白いヒガンバナや、時季外れのタカサゴユリも秋風に揺(ゆ)れていました。

文責 増田 克也



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