情熱の花びら


 道端(みちばた)に朝顔のミニチュア版のような、鮮(あざ)やかな赤い花、マルバルコウソウが咲いていました。上の写真は、直径1センチメートルほどの花びらに、ぐっと近づいて撮影したものなので、「こんな花、見たことないぞ?」と思われる方もあることでしょう。普段目にするのは、道端や草むらで、小さな花をたくさん咲かせているこのような姿が多く、木やフェンスなどにツルで絡(から)みついていることもあります。

 それにしても、花は日本離(ばな)れをした鮮烈(せんれつ)な色彩(しきさい)をしています。図鑑を開くと、案の定、アメリカ大陸の赤道直下、熱帯アメリカから、江戸末期に日本へ渡来した帰化植物でした。
 逞(たくま)しく異国で繁栄(はんえい)するマルバルコウソウは、小さな花に、南国の情熱をギュッと詰(つ)め込んでいるように感じます。

 マルバルコウソウと共に、道端でよく見られるのがキツネノマゴです。全体の雰囲気(ふんいき)が胡麻(ゴマ)に似ているので、長い間、名前を“キツネノゴマ”だと思い違いをしていました。
 この花には、入れ代わり立ち代わり虫たちが訪れます。縞模様(しまもよう)の目が印象的なオオハナアブ、長い口で蜜(みつ)を吸い上げるイチモンジセセリ、まるで水玉模様の蝶(ちょう)ネクタイのようなシロモンノメイガなど大にぎわいです。
 どう見ても、派手なマルバルコウソウの方がよく目立つと思うのですが、虫たちは、赤い花には見向きもせず、キツネノマゴに引き寄せられるように集まっていました。

 いつも何の気なしに行き来する道端も、意識して観ると色々な花があるものです。この他にも、花の形からすぐにナスの仲間と推測できる、ナス科のアメリカイヌホオズキや、よく見かける白い小菊(こぎく)、ヒメジョオンなど、普段は“雑草”というカテゴリに放り込まれる植物も、季節を感じさせ目を楽しませてくれます。
 
 ところが、今回紹介した植物は、その昔、外国から日本へ入って来たものばかりです。今やさりげなく日本の風景に溶(と)け込んだ草花も、案外、帰化植物が多いことを思い知りました。

文責 増田 克也



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