キノコに会った日


 ふらっと入った山中で、思わず足を止めて、ふり返ってしまうほどの強烈(きょうれつ)なインパクトを放つキノコがありました。ヤナギの幹からムクッと発生したそのキノコは、遠くからでもしっかりと存在をアピールしています。

 足早に引き返し、下からのぞき込めば、太いヤナギに負けないほどの迫力で、管楽器の朝顔に似た傘(かさ)を空に向けて突(つ)き上げています。細かい網目(あみめ)が広がった、傘の内側に顔を近づけて大きく息を吸い込めば、それはシイタケのようで、少し味見をしてみても悪くないと思わせる匂(にお)いです。

 次に、上から見下ろすと、傘にある、へそのような窪(くぼ)みには、昨夜の雨が溜(た)まっていました。このキノコには透水性(とうすいせい)があり、透明(とうめい)な雫(しずく)が内側の網目から、ゆっくり、じんわり、染(し)み出し、下のキノコへと引き継(つ)ぐ様子は、森における水の循環(じゅんかん)を垣間見た気持ちになりました。

 偶然(ぐうぜん)出会った個性派キノコ。たとえ名前を知らぬとも、たっぷり好奇心(こうきしん)をくすぐられ、それはそれで満足なのですが、やっぱり名前が知りたくなるのが人情です。
 そこで、撮影した写真を片手に、本校所蔵のきのこ図鑑をパラパラ・・・そしてインターネットでも検索(けんさく)すること3日間。「う〜ん・・・困った」キノコの雰囲気(ふんいき)から、サルノコシカケの類と予想はできても、そこから先には進みませんでした。

 こうなると、あの人に伺(うかが)うしかありません。但馬地方を中心に活躍(かつやく)されている、キノコ愛好家F氏に連絡し、写真を送ると・・・見る人が見れば判るものです、即座(そくざ)に「あれはアミヒラタケですよ」と返答をいただきました。

 F氏によると、アミヒラタケはサルノコシカケの仲間で、この辺りでは結構珍(めずら)しいキノコらしく、大きなものは傘の直径が40〜50センチにもなるそうです。また、若いキノコは食用にされ、成長するに従って硬(かた)く変化するということです。

 せっかく見つけたアミヒラタケですので、サルが座っても壊(こわ)れないほど、大きくカッチカチに成長する様をじっくり観察してみようと考えています。

文責 増田 克也



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