朝来山へご案内


 本校には、朝来山山頂に通じる9つの自然観察路があり、子どもたちが登山などでよく利用します。先週、この自然観察路の整備に向かう道すがら、目に付いたものをカメラに収めました。それでは新緑の朝来山にご案内しましょう。

 むささびコースの中ほどで、上の写真にあるアミガサタケが斜面(しゃめん)から、ぬっと頭を突(つ)き出しています。見た目通り、網状(あみじょう)の傘(かさ)が特徴(とくちょう)なので、名前だけは記憶(きおく)がありました。調べると、フランス料理では一級の食材として、もてはやされるらしいのですが、この姿を見るかぎり、全く食欲は湧(わ)きません。きっと、シェフの手が加えられることで、高級料理へと変身するのでしょう。

 この季節、山中はどこへ行っても甘(あま)い香りに包まれています。これはホオノキの花の香りです。見上げると、香りの主が日に透(す)けた葉っぱを輝(かがや)かせています。更(さら)に観察路を登り見下ろす先には、大人の握(にぎ)り拳(こぶし)ほどもあるつぼみを膨(ふく)らませていました。

 山道を折り返すこと数回、4月に花開いたミスミソウは、名前の由来となった、3つの角がある葉っぱだけになっていました。
 先ほどから、地面にミズナラの葉っぱが、いくつも落ちています。ミズナラのドングリに卵を産み付けて、葉っぱと一緒に切り落とす、チョッキリという虫の仕業かと思いましたが、今はまだミズナラにドングリはなく謎(なぞ)だけが残りました。

 朝来山の尾根に近づく辺りで、草丈(くさたけ)10センチほどの野性のラン、ギンランが咲いていました。うっかり踏(ふ)みつけてしまいそうな小さなギンランに、そっと近づきのぞき込むと、なかなか清楚(せいそ)な雰囲気(ふんいき)です。
 こちらも小さな白い花ですが、これだけ集まって咲くと爽快(そうかい)です。深緑色の葉っぱによく映えるこの花は、バラ科のカマツカで、普段はあまり気にかけませんが、この時季ばかりは、5枚の丸い花びらが愛らしく、つい見入ってしまいます。
 この白い花はハナミズキの仲間、ヤマボウシです。実は、白い花に見える部分は“苞”(ほう)と呼ばれる、葉っぱが変化したもので花ではありません。本当の花は真ん中にある丸い部分で、これを頭に、そして苞を頭巾(ずきん)に見立てると、お坊(ぼう)さんに似ていることから、ヤマボウシと名付けられたということです。

 朝来山展望台まで進むと、近頃(ちかごろ)、声が聞こえ始めたハルゼミの幼虫が、道しるべの看板をよじ上っています。しばらく見ていると板を水平に移動し、ついには行き止まりになってしまいました。果たしてここで羽化をする気なのでしょうか。この幼虫が無事、成虫になれたのか、後日、抜(ぬ)け殻(がら)を確認してみたいものです。

 本日のメイン作業、観察路を塞(ふさ)ぐ尾根の倒木(とうぼく)を処理して、雲海展望台まで下山をすると、その昔、この花の開花を目安に田植えを始めたという、タニウツギの花にホウジャクが来ていました。ここから望む田んぼには水が入れられ、既(すで)に田植えは終わっています。現代の田植えはタニウツギの合図より、随分(ずいぶん)、時期が早まっていることを感じました。

文責 増田 克也


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