さくら満開


 本校周辺の桜は、4月9日辺りからほころび始め、その後二日間で一斉(いっせい)に開き、ほぼ満開となりました。

 上の写真は、丹波(たんば)の国から但馬(たじま)の国へ入る玄関口(げんかんぐち)、遠阪峠(とおざかとうげ)を源とする柴川(しばがわ)が粟鹿川(あわががわ)へと合流する終端(しゅうたん)に位置する桜です。桜と水の取り合わせは相性がよく、何の気なしにカメラを向けてもそれなりに絵になるものです。
 こちらは、竹田地区の円山川に沿って植えられた桜並木です。ここでは北近畿(きたきんき)豊岡自動車道の和田山ICから八鹿(ようか)方面へと延びる橋梁(きょうりょう)の工事が進められており、この桜は着工されてから二度目の開花を迎(むか)えました。

 週末は天気も良く、どこの桜も見頃(みごろ)となりましたが、余りにも突然(とつぜん)に開花したためか、お花見に興じる人の姿も疎(まば)らでした。桜が開くと辺りは、ぐっと春らしくなり「春爛漫(はるらんまん)」という言葉がぴったりです。

 では、山の様子はどうでしょうか。朝来市から豊岡市へまたがる床尾山(とこのおさん)へ向かうと、林道沿いには黄色いポンポンをいくつも付けたミツマタが咲き乱れ、側を流れる渓流(けいりゅう)雪解け水を轟音(ごうおん)と共に、次から次へと下流へ押しやっています。

 渓流の脇(わき)にできた水たまりに目をやると、紐状(ひもじょう)に連なったところてんのような、ヒキガエルの卵塊(らんかい)がありました。顔を近づけてのぞき込んだその中には、神秘的な小宇宙が広がっています。この水たまりは、もう幾日(いくにち)かすると真っ黒なオタマジャクシでごった返すことでしょう。

 更(さら)に、足を進めると、水が染み出す斜面(しゃめん)から何やら奇妙(きみょう)な音が聞こえてきます。近づいて耳を澄(す)ますと、渓流の水音にかき消されそうなその音は、この春初めて聞くタゴガエルの声でした。
 5月の最盛期には、人の笑い声に似たユニークな合唱が山肌(やまはだ)から響(ひび)いてきますが、石の下などに潜(ひそ)んでいるため、姿はなかなか見られません。

 林道のカーブをいくつか過ぎると、突然、目の前に雪が現れ、行く手を阻(はば)まれました。ここから先は、まだ冬将軍の支配下のように思われましたが、ふと、見上げた尾根には、白いタムシバの花が咲き誇(ほこ)り、深山にも春が訪れたことを告げているかのようでした。

文責 増田 克也



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