外来種と出会った日


 本校周辺の日当たりのよい田んぼでは、これまで降り積もった雪も随分(ずいぶん)解けて、黒い土が見えはじめました。大豆の畑で枯(か)れ葉を豪快(ごうかい)に放り投げては、餌(えさ)を探しているのはツグミです。ピョンピョン飛び跳(は)ねて移動すると、土の中からミミズのようなものを引っ張り出し、ツルッと食べてしまいました
 隣(となり)の田んぼの畦(あぜ)では、ムクドリが枯れ草に深くくちばしを突(つ)っ込んでいます。こちらも首尾よく餌を捕(と)らえたようで、連写した1コマには、くちばしの先に小さなイモムシをくわえた姿が写っていました。野鳥たちも雪が少なくなり、さぞかし餌が捕りやすくなったことでしょう。

 同じ但馬でも北に向かうと、未だにうんざりするほど雪嵩(ゆきかさ)があり、川の堤防(ていぼう)から見下ろす河川敷(かせんしき)は、今なお雪野原です。
 するとそこに、ちょこまかとイタチが姿を現しました。イタチは、穴やくぼみを見つけては、頭を突っ込み獲物(えもの)を探しています。1つの穴のチェックを終えると、すかさず移動を始め、雪の谷間もサッとひとっ飛び!機敏(きびん)な動き見せたかと思うと、前脚(まえあし)を雪に捕られてつんのめったりと、ユーモラスな姿は見ているこちらを飽(あ)きさせません。
 次はこの穴、今度はあのくぼみと矢継(やつ)ぎ早に点検し、時にはシッポの先だけを残し、全身が隠(かく)れてしまうほど、深く潜(もぐ)ることもあります。
 
 今回出会ったイタチは、チョウセンイタチという外来種です。昭和の初めに、毛皮を取る目的で外国から持ち込まれたのもや、船に紛(まぎ)れてやって来たものが野生化し、今では関西地方を中心に分布を広げています。
 日本にはもともと、ニホンイタチが棲(す)んでいますが、体が大きく体力的に勝るチョウセンイタチに追いやられ、今では出会う機会もめっきりと少なくなりました。山間の本校周辺でも、見かけるイタチはチョウセンイタチ

             本校近くの県道で事故死したチョウセンイタチ

ばかりです。  

 チョウセンイタチとニホンイタチの識別は、チョウセンイタチがニホンイタチより身体が大きく毛が荒(あら)いことや、口の周りにある白い模様がよりはっきりしていることなどで区別できますが、野外で見分けるには慣れが必要です。
 その他に案外簡単に見分けられる方法は、胴体(どうたい)の長さに対するシッポの長さの割合です。チョウセンイタチでは、シッポの長さが胴体の長さの半分以上あり、ニホンイタチは半分以下です。言い換(か)えれば、シッポを2倍にした長さが、胴体より長ければチョウセンイタチ

                シッポを2つ並べると胴体より長い

で、短ければニホンイタチという訳です。

 ところで、河川敷のイタチはというと、残念ながら10箇所(かしょ)以上の穴を探りましたが、獲物は見つかりませんでした。今度は、水辺に近づき水面をじっとのぞき込み何かを探しているようです。しっかり踏(ふ)ん張った足や、ピンと斜(なな)めに上げたシッポから、水に落ちないように緊張(きんちょう)している様子がうかがえます。
 緊張しているのは、イタチだけではありません。20メートルほど離(はな)れた場所で餌を採っていた、コガモたちもイタチの接近に気づき頭を上げて警戒(けいかい)しています。

 再び、河川敷の雪野原に目を移すと、もう1匹の太ったイタチが・・・ではなく、ヌートリアが雪の上を歩いて来ます。このヌートリアも70年ほど前に、ブラジルやアルゼンチンなどから、毛皮を目的に日本へ持ち込まれた外来種です。
 私に気付いたヌートリアは一目散に河川敷を下り、水へ入りましたが、そこは多くのペットボトルや空き缶(かん)などのゴミが淀(よど)む、掃(は)き溜(だ)めのような場所した。しかしそんなことはどこ吹(ふ)く風、水面から頭だけを出し、ゴミをカモフラージュの材料にし一体化して動かなくなりました。このちゃっかりとした抜(ぬ)け目なさ
が日本で繁栄(はんえい)できた一因かも知れません。

 この度、チョウセンイタチとヌートリアの姿を垣間見て、この地にしっかりと定着し逞(たくま)しく生きる外来種が、ごく普通に、そしてすぐ近くに存在することを改めて感じさせられた一日でした。

文責 増田 克也


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