不可解なネーミング


「チュイーン、チュイーン」雪野原の上を賑(にぎ)やかに小鳥の群れが飛び交っています。そのうちの十数羽がパラパラと梅の木に下りてきました。黄色い体に黒い縞模様(しまもよう)のこの鳥は、北国から秋にやって来て冬を過ごすマヒワという渡り鳥です。全長は12センチほどでスズメよりずっと小さく、「チュイーン、チュイーン」と鳴きながら、ちょこまかと動く姿は“小鳥”のイメージにぴったりです。

 マヒワのお目当ては、雪野原から突(つ)き出たオオマツヨイグサの種です。早速、茎(くき)に飛び移ると種をついばみ始めました。数羽が一本の茎にとまると、大きく傾(かたむ)きますがそんなことはお構いなし、マヒワたちは上手にバランスを取りながら、細く尖(とが)ったくちばしで一心に種を食べています。
 群れの中には、黄色味が濃(こ)いものと薄(うす)いものがありますが、鮮(あざ)やかな黄色はオス、そして控(ひか)え目なものはメスです。

 ところで、このマヒワという名前は、“マ”と“ヒワ”に分けられます。まず“マ”は、漢字では「真」です。つまり魚でいえば、マイワシやマアジの頭文字にある「マ」と同じで、「一般的な」または「標準的な」という意味です。しかし、名前に“〜ヒワ”と付く何種類かの小鳥の中では、山地から市街地まで一年を通して見られ、しかも数が多いカワラヒワの方がずっと一般的だと思うのですが・・・・
 次に“ヒワ”は、漢字で「鶸」と書きます。「弱い」の右に「鳥」と書いて「鶸」ですから、その小ささ故に「とんでもなくか弱い小鳥」とされたのでしょうか。私の感覚では、海を越(こ)えて渡ってくるマヒワが、それほどひ弱には感じません。
 
 この鳥をマヒワと名付けた当時の人たちと、現代に暮らす者との感性に違(ちが)いがあるのは当然ですが、それにしてもマヒワのネーミングには疑問が残ります。
 少なからずジェネレーションギャップを感じていたところ、その昔、黄緑色のことをマヒワの色に模して“鶸色(ひわいろ)”と呼んでいたことを知り、「色の感覚は古人(いにしえびと)とジャストフィット!」と喜んだり・・・あれやこれやと考えさせられるマヒワです。

文責 増田 克也


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