大豆畑に秋の使者


 今年も大豆畑にノビタキがやってきました。ノビタキは春から夏にかけて、北海道や本州の中部以北で繁殖(はんしょく)し、冬を東南アジアなどで過ごす渡り鳥で、北上する春と南下する秋に、本校周辺を通過していきます。毎年、9月の下旬から、ちらほら見かけるようになり、木々の葉が色づき始める頃(ころ)にはすっかり姿を消してしまいます。

 9月27日、雨が降る大豆畑で、旅の疲(つか)れを癒(いや)しているのか、じっと佇(たたず)むノビタキを目にしたのが、この秋、最初の出会いでした。翌朝、すっかり天候が回復した大豆畑に立ち寄ると、同じ個体と思われるノビタキが、昨日と打って変わり葉っぱの上で生き生きとしていました。あちらこちらの葉っぱを飛び渡り、イモムシを捕(と)らえると早速、食事に取りかかります。餌(えさ)取りは、日が西に大きく傾(かたむ)く夕刻まで続きます

 上の写真にある、ノビタキがとまった棒に取り付けられた提灯(ちょうちん)のようなものは、黒大豆に産卵する害虫を捕らえるフェロモントラップです。ノビタキは黒大豆の丈(たけ)より一段高い棒によくとまり、これを餌探しの見張り台にしています。多くの虫を食べてくれるノビタキも、フェロモントラップに負けず劣(おと)らず特産物の生育に一役買っているようです。

 ノビタキは、日を追う毎に、1羽、2羽と数を増やし、近くの空き地でも見られるようになりました。
それぞれに、お気に入りの見張り台で空中と地面ににらみを利かせ、餌を見つけるとサッと飛び出し、再び元に戻(もど)ってきます。こちらのノビタキはくちばしに、黄色い小さな虫を捕らえました。
 この行動を何度も繰り返すと、畑や草が茂(しげ)る休耕田などへ移り、改めて餌を探しを始めます。

 ノビタキの姿を見かけなくなると、当地の秋はぐっと深まります。次回、彼らに会えるのは、繁殖地を目指して北上する来年4月になります。きっと、桜前線と共に春を運んできてくれることでしょう。

文責 増田 克也


自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp