乱れた体内時計



 毎年、お彼岸(ひがん)が近づくと、申し合わせたように花を咲かせるヒガンバナ。きっと正確な体内時計を持っているのでしょう。ところが今年は、彼岸の中日を過ぎてもほとんど花がありません。

 上の写真の桜並木が続く川岸は、毎年まっ赤なヒガンバナが咲き誇(ほこ)る場所

              例年、まっ赤な花を咲かせるはずが・・・

ですが、今年はアスパラガスに似た茎(くき)を伸(の)ばしたところで、体内時計が止まってしまったかのようです。

 他の場所も見て回ると、本来なら赤一色で埋(う)めつくされるはずの畦道(あぜみち)も、お愛想程度に数本の茎が伸びているだけで、多くはまだ地中で眠(ねむ)っています。

 近くにある地蔵堂のヒガンバナも同様で、花の盛りはまだまだ先になりそうです。ところがここで面白いものを見つけました。ヒガンバナの根本に、大仏様の頭が地面から突き出したような、丸いイボイボがたくさん見て取れます。最初は木の根っこかと思いましたが、よく見るとこのイボイボからヒガンバナが茎を出していました。これはヒガンバナの球根です。
 この球根にはデンプンがたくさんあり、その昔、饑饉(ききん)の非常食として食べられたということですが、デンプンの他に猛毒(もうどく)も含(ふく)まれています。これを毒抜(どくぬ)きして食用にするには、知識と経験が必要なので、安易に「味見してみよう」なんて気は起こさないでください。

 体内時計が狂(くる)ってしまったのは、ヒガンバナだけではありません。道端のコスモスもチラホラとまだ2分咲き程度で寂(さみ)しい限りです。
 体内時計は人の体にも存在し、不規則な生活を続けていると狂ってしまい、あらゆる病気の原因になると言われています。
 私の体内時計・・・と言っても腹時計ですが、この精度にはいささか自信があります。しかし、寝(ね)っ転がってテレビを見ながらポテトチップスをかじっていると、普段はほぼ正確に時を刻む腹時計もずいぶん遅(おく)れ気味になってしまいます。
 
 この度、植物らの体内時計を狂わせたのは、運動不足やポテトチップスではなく、この夏の猛暑(もうしょ)に他ならないでしょう。これから秋が深まるに伴(ともな)い、再び正確なリズムを取り戻(もど)してほしいものです。

文責 増田 克也


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