ヘビの威を借るイモムシ



 で、でた〜ぁ!自然観察路たぬきコースにマムシ出現!?
ちょっと待ってください。マムシにしてはずいぶん寸足らずですね。この生き物の正体は、スズメガの一種、ビロードスズメの幼虫です。体長約7センチの太短い体型と銭形模様で、うまくマムシの雰囲気(ふんいき)を演出しています。これは毒蛇(どくへび)のマムシに似せて外敵から身を守る、ビロードスズメ攪乱作戦(かくらんさくせん)なのでしょう。

 特に目立つのは、オレンジ色の大きな目玉です。前から見ると、にらみつけられているようで迫力満点ですが、これは“眼状紋”(がんじょうもん)という外敵を欺(あざむ)くための模様で、本当の目ではありません。では、目はどこにあるのでしょう? 
 眼状紋から更(さら)に先、細くなっている部分の先端には、目らしきものが見て取れます。この部分を拡大すると、小さな小さな点々が4つ5つあります。おそらくこれが目なのでしょう。

 拡大写真をもう一度見ると、三角に切れ込んだ口の周りに食べかすを付けています。そして地面には、緑色の糞(ふん)がたくさん落ちていました。
 ビロードスズメの幼虫に、葉を食べ尽(つ)くされ茎(くき)だけになったこの植物の名前が、これまた“マムシグサ”とは、全くウイットに富んだ偶然(ぐうぜん)ですね。

文責 増田 克也


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