突貫工事



 クロアナバチが地面に穴を掘(ほ)っているところに出くわしました。黒光りする3センチほどの大きな体と、白い額が特徴(とくちょう)のこのハチは穴掘りの名人です。日が照りつける中、汗(あせ)を拭(ふ)き拭き、そのお手並みをとくと拝見することにしました。

 「パラッ、パラッ」羽を2度3度はためかせ、地面に目星を付けると早速着工です。大きく足を広げて踏(ふ)ん張り体を安定させると、頑丈(がんじょう)なアゴを器用に使って一気に掘り進めます。ある程度くぼみが出来ると、穴の径を広げるためか盛んに周りをかじり始めました
 ここまで、ちょこまかと忙(せわ)しなく動いていたクロアナバチが、一瞬(いっしゅん)、ピタッと止まりました。次の瞬間、いきなり逆立ちをして、今度は下へ掘り進みます。ここでもしっかりと後脚(あとあし)をハの字にして広げていますね。
 今度は頭を水平にして穴の天井を削(けず)っているようです。工事中に出た細かい土は足を使ってかき出しますが、大きな粒はアゴではさんで搬出(はんしゅつ)します。

 これを繰(く)り返しているうちに、穴はどんどん深くなり、体がすっぽり入ってしまうほどになりました。ここまでの所要時間は、なんと7分弱。アッという間の突貫工事(とっかんこうじ)で、これは正に名人の技ですね。

 ところでクロアナバチは何のために穴を掘っているのでしょう。それは巣を作るためです。「巣を作る」と言っても単独で行動するハチなので、スズメバチのような大きな巣にはなりません。
 この巣穴に毒針(どくばり)で麻酔(ますい)をかけて捕(と)らえたキリギリスの仲間を運び込み、やがて孵化(ふか)する幼虫の餌(えさ)にするそうです。餌を殺すことなく、麻酔をかけた状態で鮮度(せんど)を保つとは、クロアナバチは大変な知恵者(ちえもの)ですね。

文責 増田 克也


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