真夏の紅葉



 本校周辺の山では、梅雨明けのころから、まるで紅葉でもしているかのように、赤茶けた木が目立つようになりました。これは“ナラ枯(が)れ”と呼ばれる現象で、体長5ミリ程の甲虫(こうちゅう)、カシノナガキクイムシ

     資料提供:森林総合研究所 関西支所

が、コナラやミズナラなどのドングリを実らせる木に穴を開けて入り、その際に木を弱らせるカビ菌(きん)を持ち込みます。カビ菌が入った木は水を十分に吸い上げることができず、やがては枯れてしまうという木の伝染病です。

 このところ、南但馬自然学校でもナラ枯れと思われる木がみられます。これは生活棟からキャンプ場へ向かう通路にあるコナラですが、周囲の青々とした木々の中に、ぽつんと1本立つ茶色い姿は異様に感じます。既(すで)に枯れているのでしょう、下から見上げると全ての葉が茶色く縮れていました。そして根元には、きな粉でもふりかけたようにたくさんの木屑(きくず)がたまっています。
 この木屑は、カシノナガキクイムシが、幹の中に入り込む際に空けた穴から出る木屑と糞(ふん)などが混ざり合ったもので“フラス”と呼ばれ、ナラ枯れの病原菌に侵(おか)されている樹木の特徴(とくちょう)でもあります。
 
 生活棟裏の林でも数本のコナラやアベマキにフラスが見られ、そのほとんどが葉を茶色く枯らしていました。中には緑色の葉を保っているものもありましたが、これも茶色に変わるのは時間の問題だと思われます。
 その他にも、子どもたちが隠(かく)れ家づくりで利用する自然観察館裏のフィールドでも、ブランコを取り付けたコナラとアベマキの根元にフラスがたまっていました。

 本校の朝来山を東から遠望すると、麓(ふもと)の林にナラ枯れが集団発生している箇所(かしょ)が見られます。音もなく静かに忍(しの)び寄るナラ枯れ被害(ひがい)。このまま拡大すれば、本校の周辺ではただでさえ少ない、コナラ、アベマキ、ミズナラといったドングリを実らせる貴重な樹木が全滅してしまうのではないかと危機感を募(つの)らせています。

 兵庫県では年を追うごとに被害が拡大し、今や但馬地域全域でナラ枯れがみられ、今後、県南部にも被害の拡大が懸念(けねん)されるため、一刻も早い防除法の開発が期待されるところです。

文責 増田 克也


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