土手は花盛り



 5月の上旬(じょうじゅん)はよい天気が続き、見る見るうちに野や山の緑は深く濃(こ)くなりました。心地よいポカポカ陽気に誘(さそ)われ川の土手を歩くと、色とりどりの花が咲いています。普段は目もくれない雑草も、花が咲くと気にかかるものです。そこで、この機会に花を咲かせた雑草をじっくりと見てみることにしました。

 この土手で一番目立っているのは、黄色い花を咲かせたクサノオウです。この聞き慣れない名前の由来は、いくつかあるようですが、優秀(ゆうしゅう)な薬草になるので、“草の王様”という説が有力なようです。周りにはこれから開くマラカス形のつぼみがたくさんあるので、この先当分は黄色い花を楽しめることでしょう。

 こちらは、草の王様に負けじと、2段3段と花を重ねたオドリコソウです。独特な形をした上の花びらは、家の軒先(のきさき)みたいに覆(おう)い被(かぶ)さっています。これを下からのぞき込むと、裏側には雄(お)しべと雌(め)しべが貼(は)りつき、まるで和紙のちぎり絵ような質感です。
 オドリコソウの葉っぱを眺(なが)めていると、「お造りの下に敷(し)かれる“つま”の大葉に似ているなぁ〜」と思い調べると、案の定、シソ科の植物でした。

 周辺の草などにヒゲを絡(から)みつけ、自身を固定してピンク色の花を咲かせるカラスノエンドウには、アブラムシがたくさん集まります。そのことを知っているのでしょう、早速、アブラムシを食べるナナホシテントウがやってきて、葉っぱや花びらの間を丹念(たんねん)に探っていました。

 この他にも、青白い小さな花の寄せ集まりが、クールな光を放つLEDライトのようなノヂシャの花や、細長い赤紫色(あかむらさきいろ)の花を咲かせたムラサキケマンが目につきました。
 最後に、ムラサキケマンがラッパ状の花を向けた先で風に揺(ゆ)れるスズメノヤリを口にくわえると、学校帰りに道草を食って「これはタバコや!」と大人ぶって遊んだ子どもの頃(ころ)の記憶(きおく)が思い出されました。

 土手を図鑑(ずかん)片手に、あれやこれやと見て回っていると、ついつい時が経つのを忘れてしまいます。みなさんも天気のよい日にお弁当をもって雑草のお花見などはいかがでしょうか。

文責 増田 克也


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