春の雪



 先週の火曜日に雪が降り、南但馬自然学校の積雪は10pを超(こ)えました。3月に入り雪もなく、このまますんなり春になるのかと思っていただけに、いきなり冬に引き戻(もど)された気分です。
 そんな中、自然観察路きつねコースでは、上の写真にあるウグイスカグラが花を咲かせました。遠目からは全くわからないほど小さな花は、どれも2つ並んでラッパ状に開きます。思いがけない雪に見舞(みま)われ、花びらが雪焼けしたのでしょうか、黄色く変色しているのは残念ですが、5月に実る美味しい果実が楽しみです。

 校内を巡回(じゅんかい)すると、芝生広場のハナミズキは真っ二つに折れ、せっかくふくらんだつぼみが痛々しく感じます。
 太いヤマザクラも幹をへし折られてしまいました。こちらのつぼみも大きくなっていましたが、こうなるとクラフトの材料に活用する他にありません。
 森のスポーツ広場では、オーストラリア原産のギンヨウアカシアが大きく傷つき、雨乃宮の池にある本校で一番大きなクスノキは、枝周りが人の腕(うで)ほどもある太い枝をいくつも落としています。
 水分をたっぷり含(ふく)んだ重たい春の雪は、思いの外、木々にダメージを与(あた)えていました。

 この雪の重みで折れた枝を、首尾よく利用しているものがいました。生活棟に続く中央階段で、大きくうなだれたシラカシの枝先が何者かに食いちぎられています。さらに地面には葉っぱが散らばり、足跡(あしあと)も残されていました。このことから推測すると、どうやらニホンジカがつい先ほどまで枝葉を食べていたようです。人間の接近に気付いてこの場を立ち去ったのでしょう。次の日この枝の様子を見に行くと、すっかり食べられ丸裸(まるはだか)になっていました。
 ニホンジカはシラカシの他にも、マダケの葉っぱや、雪で地面に落とされたヤマナラシの花、満開になったウメの花まで食べていました。春の雪は彼らとって、普段は口が届かないところにある食べ物を与えてくれる正に「恵みの雪」になったようです。

 本館裏手の雑木林に回り込むと、早咲きで知られるマンサクが重たそうに雪を乗せながらも、しっかりと花を咲かせています。「冬将軍の悪あがきも最早これまで!」とでも言いたげに、力強く四方に黄色い花びらを伸(の)ばしていました。

文責 増田 克也


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