ブランドマークのてんとう虫



 南但馬自然学校は、景観に配慮(はいりょ)した設計がなされているため、校内には電柱がありません。ただ唯一(ゆいいつ)、電線を地中に埋(う)め込むため、校門付近に引き込み柱が設けられています。
 その引き込み柱を点検しているとU字形に曲がったチューブの上に、ぽつんとした赤い物が目に入りました。近づいて見ると、それは立派なカメノコテントウでした。
 
 カメノコテントウは、体長が1センチ以上もある日本で最大といわれているてんとう虫です。身体を覆(おお)う固い前羽の縁(ふち)は、作業用のヘルメットみたいに反り返り、UFOのようにも見えます。前羽の表面はツヤツヤと輝(かがや)き、子どものころに憧(あこが)れた戦隊アニメのヒーローが操るマシンにそっくりで見ているだけでもわくわくしてきます。

 この“カメノコテントウ”という名前は、カメの甲羅(こうら)にある模様に似ているところから付けられたものらしいですが、私は初めて見たときから、あの有名ブランドのマークに思えて仕方がありません。
 「ではマークをもっとアップで・・・」カメラをぐ〜んと近づけて撮影しようとすると、それがお気に召(め)さなかったのでしょう、頭と足を前羽の中に引っ込める防御(ぼうぎょ)の姿勢をとり、固まったように動かなくなってしまいました。
 それなら根競べです。カメラをかまえたままじっと待つこと数分間・・・ようやく、恐(おそ)る恐る足と触角(しょっかく)を、1本、また1本、と出したかと思うとチューブの上を早足ではっていきました。これ以上驚(おどろ)かせるは気の毒に思えたので行く先を目で追うと、白いボックスの下に入り込みやっと落ち着いた様子でした。

 この時季、通常ならばてんとう虫は越冬(えっとう)しているはずです。なので今回の出会いは本当に幸運でした。聞くところによると、カメノコテントウは岩の割れ目や木の皮の下に集団で越冬するらしいのです。次回は、ぜひ越冬しているところを見てみたいものです。たくさんのブランドマークがさぞかしリッチな気分にさせてくれることでしょう。

文責 増田 克也

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