霧の朝に



 山に囲まれた南但馬地方の朝は霧(きり)で始まります。霧の濃(こ)い朝は、午前11時ころまで辺りは白く、天候の悪い日には午後4時には暗くなるという、太陽が恋(こい)しい季節になりました。

 先日、深い霧に包まれた田んぼの近くを通りかかると、上の写真のアオサギに出会いました。餌(えさ)を探しているらしく、畦道(あぜみち)をうつむきながら抜(ぬ)き足差し足で歩いています。ピタッと立ち止まり草むらを突(つつ)きますが、残念なことに霧でかすんで見通すことができません。霧は普段見られた風景を幻想的(げんそうてき)に変えてくれますが、生き物の観察には厄介者(やっかいもの)です。

 遠くの電線に、ポツッと小さなシルエットを見つけました。徐々(じょじょ)に近づくと、白いシルエットに少しずつ色が載(の)り、やがて霧の中からスッと姿が浮(う)かび上がりました。灰色の頭に茶色い背中、美しいオスのチョウゲンボウです。チョウゲンボウは冬に渡って来るタカの仲間で、遠くからでもすぐ見分けられますが、この霧では大きさや形から想像するしかありません。
 チョウゲンボウはこちらに気づくと、サッと飛び出し約50メートル離(はな)れた電柱に移動しました。これだけ離れると何の鳥なのか全く見当がつきません。
 民家の庭に目をやると残り少ない柿の実をついばむツグミも、濃い霧に埋(う)もれてしまいそうです。

 午前10時30分を過ぎてようやく霧が晴れてきたので、先ほどアオサギがいた畦に向かうと、別の個体が餌を捕っていました。じっと動かず一点を見つめていたかと思うと、次の瞬間(しゅんかん)「エイ!」とばかりに首を伸ばし何かを捕らえたようです。写真を拡大してみるとくちばしの先にイナゴを挟(はさ)んでいます。次にイナゴをのど奥に放り投げると、あっと言う間に呑(の)み込んでしまいました
 アオサギが餌を捕る近くの電柱には、朝に出会ったチョウゲンボウが、何日かぶりの青空をバックにして地面に向けてじっとにらみを利かせていました。

文責 増田 克也

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