困っタヌキ



 最近、校内でタヌキの姿を見かけるようになりました。この日も、生活棟へ続く通路で、タヌキとばったり出くわしました。向こうもこちらに気付いたらしく、数秒間、視線を投げかけていましたが、さほど気にすることもなく地面を方々嗅(か)ぎ周ると、落ち葉の下に餌(えさ)でも見つけたのか、落ち葉ごとムシャムシャと食べてしまいました。その後、通路の脇(わき)にしゃがみこんで糞(ふん)をし、そそくさと坂道を下って行きました。
 タヌキの行方を追うと食堂棟の近くに立ち寄り、熟して落ちた柿(かき)の実を前脚(まえあし)で押さえてかぶりつきはじめました。喉(のど)に詰(つ)まりそうになりながらも大口で平らげると、小走りに駆(か)けだしどこかへ姿を消してしまいました。

 先ほどタヌキが落としていった糞が気になり、その場へ戻(もど)ってみると、それは握(にぎ)り拳(こぶし)ほどの大きさをした、きめの細かい泥(どろ)のような糞でした。糞をしてから物の数分ほどで、糞を食べるコガネムシの仲間のダイコクコガネが中へ潜(もぐ)り込もうと奮闘(ふんとう)しています。糞たりとて無駄(むだ)にはしない自然の循環(じゅんかん)システムに感心させられました。
 この糞をよく見ると未消化の柿の実が混ざっていました。おそらくあのタヌキは、南但馬自然学校にたくさん実る柿の実を目当てにやってきたのでしょう。

 翌朝のこと、またあのタヌキに出会いました。なんと体を丸めて心地よく眠(ねむ)っているではありませんか。しかもこの場所は、浴室棟の裏口です。傘立(かさた)てのマットをふとん代わりにして、こんこんと眠っています
 その姿はなかなか可愛らしいものですが、あちらこちらに糞をしたり、倉庫の奥に入り込んだりと、余りの振(ふ)る舞(ま)いに業を煮(に)やし、保護して山へ帰すことにしました。このタヌキにとってはつかの間の自然学校でしたが、今では山で無事に暮らしていることでしょう。

文責 増田 克也

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