ヒガンバナの咲く頃



 毎年、お彼岸(ひがん)近くになると、申し合わせたかのように一斉(いっせい)に花を咲かせるヒガンバナ。今年は涼しい日が続いたせいか、9月中旬から、ちらほらと見かけるようになりました。
 田んぼの畦(あぜ)や川の土手などに、大きく鮮(あざ)やかな花を咲かせたヒガンバナは美しいものですが、子どもの頃(ころ)から「ヒガンバナを持ち帰ると家が火事になる」とか「お墓に咲く花は縁起(えんぎ)が悪い」などと言い聞かされて育った私には、触(ふ)れてはならない“禁断の花”でした。今でもあの赤色が毒々(どくどく)しく感じられるのはそのためでしょう。そんな子どもの頃のイメージを表現してみようと、少し工夫をして撮影したのが上の写真です。

 畦を彩(いろど)るヒガンバナが盛りを過ぎて白けてくる頃になると、当地の稲刈(いねか)りもほぼ終わり、田んぼでは野鳥の姿をよく見かけるようになりました。
 数羽で田んぼにやって来たのは、白い羽が美しいチュウサギです。稲がある時季は、ぬうっと潜望鏡(せんぼうきょう)のように頭だけをのぞかせていたチュウサギも、稲刈りが済んだ今では全身をはっきり見ることができます。チュウサギの手前で稲株(いなかぶ)にうずくまるっている小さなものは、チドリの仲間のケリです。このケリもまた田んぼでよく見かける野鳥です。

 次に、田んぼを後にして南但馬自然学校に“実りの秋”を探してみました。野外キッチンの近くで、4月に白い花を咲かせたコブシが、皮をかぶった実をぶら下げています。やがて弾(はじ)けたように皮がむけ、中からツヤツヤとしたオレンジ色の実が顔を出します。このコブシの木には、まだ白っぽいもの、赤紫(あかむらさき)に色づいたもの、そして皮がむけたものなど、実の成熟過程が見て取れました。
 キャンプ場にある農園に立ち寄ると、サクッとした歯ごたえとリンゴのような風味がたまらないナツメが赤く色づきはじめています。イチジクは食べ頃まであともう少し。すっかり葉を落とした枝の先端に、トンボをとまらせた柿の木には立派な実がついています。山際まで行くとミツバアケビの実がパックリと開いていました。

 実を探して上ばかりを見ていましたが、「ガザゴソ」という物音に地面に目をやると、子犬ほどのタヌキがトコトコと駆け抜けていきました。このタヌキも“秋の実り”を目当てに本校へやって来たのでしょうか。

文責 増田 克也

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