排水路は専用バイパス
このところ、南但馬自然学校ではニホンアナグマがしばしば姿を見せるようになりました。ニホンアナグマは、本州、九州、四国に分布する、柴犬(しばいぬ)より一回りほど大きな動物です。
名前に“クマ”という文字がありますが、ツキノワグマやヒグマの仲間ではありません。顔を見るとタヌキによく似ていますが、これまたタヌキの仲間でもありません。それではいったい・・・実は意外にもイタチの仲間です。そう言われれば、ずんぐりした体の割りに顔は細く、鼻筋がシュッとしているところなどはイタチに近いようにも思えます。
「ガザガザ、ゴソゴソ」生活棟の周りで、ニホンアナグマが餌(えさ)を探しているところに出くわしました。木の幹に隠(かく)れて見ていると、ひっきりなしに動いていたニホンアナグマが、突然(とつぜん)ピタッと座り込み、飼い犬が「おあずけ」でもするように一点を見つめています。次の瞬間(しゅんかん)、鼻面を勢いよく地面に突っ込むと同時に、あごの下できちんとそろえた両方の前脚(まえあし)で素早く土を掻(か)き始めましたが、残念なことに餌は見つからなかったようです。
次に、倒木(とうぼく)の上でピタッ。狙(ねら)いを定めて土を掻くと・・・今度は何かを仕留めた様子です。写真を拡大して見ると、これはカブトムシの幼虫でしょうか、見事に大きなイモムシを捕(と)らえています。
ニホンアナグマは、昆虫(こんちゅう)や小動物はもちろん、きのこや木の実なども食べる雑食性の動物です。
ところで、このニホンアナグマはどこからやってくるのでしょう。実を言うと、校内にいくつも巡(めぐ)らされた、排水路(はいすいろ)の中をトンネルのように利用して行き来しています。
餌を探している時も、気になる排水路のチェックを怠(おこた)りません。「う〜ん、この穴はいくら何でも小さすぎて入れないなぁ・・・」「おっ、ここなら使えるぞ!」溝(みぞ)をまたいで「よし、この幅(はば)ならだいじょうぶ!」ニホンアナグマのひとり言が聞こえてきそうです。排水路に入ったところを見計らって、そっとのぞいてみると、しっかり目が合ってしまいました。
南但馬自然学校へやって来る、ニホンアナグマ。これからもユーモラスな仕草 で愛嬌(あいきょう)を振(ふ)りまいてくれそうです。
文責 増田 克也
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