木の枝にそっくり
世の中には、変わった生き物がいるものです。体長2センチほどの枝の切れ端(はし)にそっくりな“ガ”を見つけました。思わず顔を近づけてのぞき込みましたが、見れば見るほど不思議な生き物です。
南但馬自然学校には、たくさんの街路灯があります。その明かりに引き寄せられたのでしょう、夜が明けて辺りが明るくなってもホヤにくっついて動こうとはしません。「それならば」と、じっくり観察をすることにしました。
まず、横から見てみると、脚(あし)が出ていなければ、左右どちらが頭なのかわからないほどすっかり木の枝です。表面を覆(おお)う銀色の鱗粉(りんぷん)が木の皮の雰囲気(ふんいき)をうまく出しているのには驚(おどろ)かされますが、その皮がはがれて黄色い木肌(きはだ)がのぞいている様子などは、見事としか言いようがありません。
次に、上から見下ろしても、やっぽり木の枝にしか見えません。尾の辺りは、小枝が「ポキッ」と折れた断面を上手に表現しています。
今度は顔の正面を見てみましょう。ここには目や口があるはずなんですが、どこが何やらさっぱりわからず、こちらも枝の断面にそっくりですね。
チョウと比べて、とかく嫌(きら)われ者の“ガ”ですが、中にはこんなに愉快(ゆかい)なものがいるのですね。夏に向けて、南但馬自然学校の街路灯には、いろいろな昆虫(こんちゅう)が集まります。これからは“ガ”だからといって毛嫌いせずに関心を持って観(み)ていきたいと思います。
文責 増田 克也
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