姿を見せぬ瑠璃色の小鳥



 
 但馬の山には、コルリというそれは美しい青色の小鳥が棲(す)んでいます。コルリはフィリピンやボルネオ島などで冬を過ごし、春には中国や朝鮮半島(ちょうせんはんとう)、そして日本へ渡り繁殖(はんしょく)をする渡り鳥です。日本での繁殖は、主に本州の中部より北の地域と北海道で行いますが、但馬地方の高い山でも繁殖しているようです。

 この「コルリ」というアニメキャラクターのような、かわいらしい名前を漢字で書くと「小瑠璃」となります。つまり「小さな瑠璃色(るりいろ)の鳥」という意味ですね。
 体長約14センチの“コルリ”が小さな瑠璃色の鳥なら、約16センチの“オオルリ”というコルリより一回り大きな野鳥も存在します。この2種類はどちらも春に日本へやって来て繁殖をする渡り鳥で、姿や色もよく似ているため同じ仲間のように見えますが、コルリはツグミ科、オオルリはヒタキ科で分類上では全く違うものです。
 また、その暮らしぶりにも差があります。オオルリは、山地の渓流(けいりゅう)に沿った森を好み、高い木の梢(こずえ)などでさえずります。この声をたよりに辺りを探すと、案外、簡単に姿を見られることがあります。
 一方、コルリは笹(ささ)などの下草が茂(しげ)る場所を好み、主に地上で生活し、さえずる時も茂みから出ることはないので、観察できる機会が大変少ない野鳥です。

 先日、その目にすることが少ないコルリを、南但馬自然学校周辺の奥山で観察する機会に恵まれました。
 時刻は午後7時、周りが薄暗くなり始めたころ、何の前触(まえぶ)れもなく突然(とつぜん)、コルリが姿を現しました。普段は薮(やぶ)の中で生活をするコルリが、私の前に現れたのは理由があります。野鳥の中には1日の締(し)めくくりに、水浴びをしてからねぐらに入るものがありますが、このコルリもそのために水場へ出てきたのです。
 
 それでは、コルリの水浴びの様子を見てみましょう。
 静かにゆっくりと水に入ると、慎重(しんちょう)に周りを見回してから羽を震(ふる)わせ始めました。勢いよく水しぶきを上げ気持ちよさそうに水を浴びていたかと思うと、突然ピタッと動きを止めて辺りに注意を払います。用心深い野鳥たちは無防備になりやすい水浴びの時には、ことさら周囲への警戒(けいかい)を怠(おこた)りません。一通り水を浴びると納得したように、すっかり暗くなった薮の中に再び姿を消して行きました

 いかがですか、みなさんもコルリに会ってみたいと思いませんか。彼らに会うには少し辛抱(しんぼう)が必要です。下草が茂る山の中で、とにかく待つしかありません。そのときに手がかりになるのが鳴き声です。この声は、コルリと同じツグミ科のコマドリという野鳥によく似ていますが、「チッチッチッチッ」と前奏が入ることで区別できます。さえずりが聞こえる場所で静かにしていると、瑠璃色の小鳥がひょっこり姿を現すかも知れませんよ。



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