あっち向いてホイ!



 南但馬自然学校には、イカルという野鳥が数羽の群れで、時々やって来ます。イカル

                    田んぼで餌を探すイカル

は頭からマスクをすっぽりかぶったような黒い顔と、体にふつり合いなほど大きな黄色いくちばしが特徴(とくちょう)です。大きさはスズメよりひとまわりほど大きく、本校周辺では一年を通して見られる野鳥です。

 ところが、地域の方に「イカルが南但馬自然学校にもやって来るんですよ・・・」などとお話しすると「きょとん」とした表情をされることがあります。それもそのはず、この辺りでは、この鳥のことを“イカル”とは言わず“マメマワシ”と呼んでいます。マメマワシとは、豆をくちばしで上手に回して食べる

             ジュズダマの実をくちばしの中で回して食べるイカル

ことから付けられたイカルの地方名です。
 そこでイカルをマメマワシに置き換(か)えて話すと「あ〜マメマワシのことか・・・」と理解してもらえますが、それでもダメは場合は「お菊二十四(おきくにじゅうし)と鳴く鳥ですよ」と説明すると、特にお年寄りにはすんなりと納得(なっとく)してもらえます。

 「お菊二十四」、これは、この地域に昔から伝わるイカルの“聞きなし”です。“聞きなし”とは、野鳥のさえずりや虫の音を、人間の言葉に置き換えて表現することです。ウグイスのさえずりを「法華経(ほけきょう)」とお経に聞きなしたのはその代表的なものです。

 それでは、与布土川(ようどがわ)の岸でさえずる“イカルの声”を聞いてください。いかがでしたか、「お菊二十四」と聞こえたでしょうか?
 実は、イカルのさえずりには、いくつかのパターンがあり、今回録音したものは「お菊二十四」とは聞こえにくいですね。
 う〜ん残念です・・・ところが、このさえずりを繰(く)り返し聞いているうちに、「あっち向いてホイ!」と聞こえ始め、その後、何度聞き直しても「あっち向いてホイ!」と聞こえるようになってしまいました。

 みなさんもイカルの声で、オリジナルの聞きなし作りに挑戦してみませんか。きっと楽しい聞きなしができあがることでしょう。

文責 増田 克也

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