ヤマアカガエルの卵塊 09.02.03 




春に向けて産卵開始



 「キャラララ、キロロロ」山に続く斜面(しゃめん) の近くを通りかかると、聞き慣れない声が響(ひび)いてきます。それは鳥でもなく虫でもない、大変不思議なものでした。
 「これはもしかして!?」と思い、山際(やまぎわ)に沿って延びる側溝(そっこう)をのぞいてみると・・・ 案の定(あんのじょう)、そこには両手ですくっても、はみ出しそうなほどの卵塊(らんかい)が産み付けてありました。
 そこで、卵塊の周りに積み重なった葉っぱを1枚ずつそっと取り除くと、赤茶色のメスと褐色(かっしょく)のオスがしっかり抱接(ほうせつ)したヤマアカガエルのペアが姿を現しました。あの不思議な声と溝(みぞ)に産み付けられた卵塊は、このヤマアカガエルのものだったのです。

 ヤマアカガエルや近い仲間のニホンアカガエルは、他のカエルが冬眠から覚めて活動を始める前の、寒いこの時季に産卵をします。これは、春から初夏にかけて産卵する他のカエルに先駆(さきが)け、いち早く孵化(ふか)したオタマジャクシが餌(えさ)を採りやすくするため時間差をつけているのだと聞いたことがあります。そして、早春に産卵を終えたヤマアカガエルは、暖かくなる頃(ころ)まで再び冬眠をするそうです。

 改めて、卵塊に顔を近づけてのぞき込むと、ゼリー状の卵塊は下になった葉っぱの葉脈(ようみゃく)まで透(す)けるほど澄(す)み、まるで異次元の世界へ迷い込んだような、なんとも不思議な気分にさせてくれます。よく見るとすでに細胞分裂(さいぼうぶんれつ)が始まっているのか、黒い卵に筋が入っているものもありました。
 
 南但馬自然学校では、ヤマアカガエルの産卵が一段落すると、次はニホンヒキガエルの産卵が始まります。カエルたちに導かれるように季節は着実に春へ向かっているようです。

文責 増田 克也


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