ヒドリガモ 09.01.27 




緑のじゅうたん



 川の流れが緩(ゆる)やかな場所にはカモが集まります。川面にプカプカ浮(う)いているのは、冬にユーラシア大陸から日本へ訪れる中型のカモで、名前をヒドリガモと言います。ヒドリガモは南但馬自然学校の周辺でも、マガモやカルガモと並んでよく見かける身近なカモです。
 オスの姿は華(はな)やかで、茶色の頭や銀色の胴体(どうたい)は光を反射して美しく輝き、くちばしから頭の後ろへ延びたクリーム色のラインは、遠くからもよく目立つ一番の特徴(とくちょう)です。一方、メスは全体にシックで、特に幾重(いくえ)にも重ねて、背中へ折りたたんだ羽の色合いと模様は大変落ち着いた味わいがあります。

 先ほどまで遠くを漂(ただよ)っていたヒドリガモの小さな群れが、こちらへ少しずつ近づき始めました。どこへ行くのか目で追っていくと、川の淀(よど)みに集まったウキクサに寄りつき、一斉(いっせい)に食べ始めました。するとどうでしょう、遥(はる)か遠くに浮かんでいた群れも移動を始め、ついには、ウキクサの周りは二十数羽のヒドリガモでごった返す騒(さわ)ぎとなりました。

 淀み一面に広がった緑のじゅうたんのようなウキクサは、またとないご馳走(ちそう)なのでしょう、ヒドリガモたちは一心不乱に食べています。
 すると、緑のじゅうたんのまん中を突き破るように、ヒドリガモよりずっと小柄(こがら)な2羽のカイツブリが、水中から「ポッカリ」と浮かび上がりました。カイツブリもご馳走を食べに来たのでしょうか? いいえ、カイツブリは主に魚などの水生生物を食べる水鳥ですのでウキクサは食べません。
 その後、ヒドリガモの群れに入り込み、しばらくの間くつろいでいましたが、再び「ズボッ」と水中に潜(もぐ)り姿を消してしまいました。きっと好奇心(こうきしん)の強いカイツブリが、たくさん集まったヒドリガモの様子を伺(うかが)いに来たのでしょう。

 それにしても、この寒い時季にウキクサが発生するとは驚(おどろ)きです。この水域では、思わぬご馳走の大量発生に、ウキクサがなくなるまでの間、ヒドリガモが入れ代わり立ち代わりやって来ては大変なにぎわいをみせていました。

文責 増田 克也


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