ヤマガラ 08.12.09




ヤマガラと松の実



 南但馬自然学校に植えられたマツの木に、ヤマガラという小鳥がたびたびやって来ます。「パッ、パッ」と歯切れのよい羽音(はおと)が聞こえたかと思うと、もうマツボックリの先端を足で掴(つか)み垂直にとまっています。次に、うまくバランスを取りながら、何やらくちばしでマツボックリを2度、3度つつくとあっと言う間に飛び去っていきます。しかし、10〜15分後にはまたやって来てマツボックリをつつきます。マツボックリの中にはよほど美味(おい)しい虫でもいるのでしょうか。

 ヤマガラのお目当ては虫ではなく、“松の実”と呼ばれるマツの種です。マツの木にやって来たヤマガラの写真を拡大してみると、ほら、くちばしにはしっかりと松の実をくわえていますね。
 
 松の実は人も食べることができます。食用にされるのは主に「チョウセンゴヨウ」という品種で、サラダにトッピングしたりお菓子(かし)やケーキの材料にも用いられます。スーパーマーケットでは中華食材(ちゅうかしょくざい)として販売されているので、目にされた方もあることでしょう。

 では、ヤマガラが食べている松の実はどんなものでしょうか。そこでヤマガラが何度も通うクロマツの木からマツボックリをもいで、松の実を取り出し味わってみることにしました。
 松の実は、マツボックリのひだの間に見える薄(うす)い羽根をピンセットでつまんで引っ張ると簡単に取り出すことができました。羽根の先端(せんたん)に重りのようについている、5oほどの松の実の殻(から)を丁寧(ていねい)に外して口に入れてみましたが、あまりにも小さすぎるためか、マツの香りはするものの味はほとんど感じませんでした。
 松の実について調べると、不老長寿(ふろうちょうじゅ)の食べ物として仙人(せんにん)が用いたと言われるほど、油分やタンパク質が豊富に含(ふく)まれているそうです。人間の食味はともかく、ヤマガラにとって厳しい冬を乗りきるための大切な食料なのでしょう。

 マツの木にはヤマガラだけでなく、小さなチョンマゲがチャーミングなヒガラや、頭に黒いベレー帽(ぼう)をかぶったようなコガラなどもやって来ます。みなさんもマツの木の下で、イスにでも腰掛(こしか)けて静かに待ってみてください、きっといろいろな野鳥に出会えますよ。

文責 増田 克也

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