シロカネイソウロウグモ 08.09.23




いぶし銀の居候



 南但馬自然学校の自然観察路脇(しぜんかんさつろわき)に張られた、ジョロウグモの網(あみ)に大きな獲物(えもの)がかかりました。どうやらハチの仲間のようです。
 満足そうに獲物を食べるジョロウグモを見ていると、網の上から小さなクモが姿を現しました。子どものクモでしょうか。いいえ、これは子どもではなく、獲物を捕(と)らえたメスのジョロウグモと同居するオスのクモです。
 秋はジョロウグモの恋(こい)の季節です。体の小さなオスはメスに餌(えさ)と間違われて食べられないように、メスが脱皮(だっぴ)した直後や餌に夢中になっている隙(すき)を狙(ねら)って交接します。おそらくこのオスも食事中のメスと交接する機会をうかがっているのでしょう。

 ジョロウグモの網を隅々(すみずみ)まで見回すと、銀色に光る水滴(すいてき)のようなものがひっかかっています。大して気にも留めずにいると、突然(とつぜん)、その水滴が動き出しました。顔を近づけてのぞき込むと、それはオスのジョロウグモとは比べものにならないほど小さなクモでした
 早速、調べてみると“シロカネイソウロウグモ”という名前でした。体長約3o、銀色の腹部が三角おにぎりのように尖(とが)っているのが特徴(とくちょう)です。ジョロウグモの他に、コガネグモトゲグモオニグモなどの網に居候(いそうろう)して、宿主の食べ残しなどを失敬(しっけい)して生活しています。
 「居候は気楽でいいなぁ〜」と思われるかもしれませんが、彼(かれ)らも厳しい自然界で生きています。うっかりしていると外敵に襲(おそ)われ命を落とすことになります。

 シロカネイソウロウグモを、そっとつまんで手に乗せるといかに小さいかがよくわかります。小さくても足を伸(の)ばした姿は立派なクモです。改めて自然観察路にあるジョロウグモの網を調べると、10箇所(かしょ)中、5箇所の網にシロカネイソウロウグモを見つけることができました。これまで、銀箔(ぎんぱく)を貼(は)りつけた伝統工芸品のような、こんなにユニークで美しいクモが身近にいるとは全く気づきませんでした。
 みなさんも近くにあるクモの網を探してみてください。きっと「いぶし銀の居候」に出会えることでしょう。

文責 増田 克也


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