山で出会ったチョウたち
梅雨が明けた途端(とたん)に連日の真夏日が続いています。この暑さにうんざりし涼しさを求めて山に向かいましたが、この日、兵庫県北部、豊岡市の最高気温は37℃を超える猛暑日(もうしょび)で、向かった山の中でも29℃もありました。
あまりの暑さのためか生き物の気配はなく、ただジリッと太陽だけが照りつけていました。それでも、豪華(ごうか)な二階建ての花を咲かせたヤマジノホトトギス、花の形がトラの尻尾(しっぽ)に似ているので名付けられたオカトラノオ、梅雨が残した忘れ物ヤマアジサイなど、山の花たちが静かに迎(むか)えてくれました。
しばらく進むと、白い花を咲かせたヒヨドリバナがたくさんのチョウを集めています。このチョウたちはオレンジ色の羽に黒い模様が鮮(あざ)やかな、ヒョウモンチョウの仲間です。そっと近づきのぞき込むと、木漏れ日(こもれび)のスポットライトに浮(う)かび上がる、オオウラギンスジヒョウモンやミドリヒョウモンが幻想的(げんそうてき)な姿を見せてくれました。ヒョウモンチョウたちとの出会いに気をよくし、この辺りで他のチョウも探してみることにしました。
まず目に付いたのは、長距離(ちょうきょり)を移動することで知られるアサギマダラです。旅の途中でエネルギー補給でしょうか、口先を器用に動かして蜜(みつ)を吸っています。薄暗い日陰(ひかげ)にはキンモンガが葉っぱに張り付いて休んでいます。すぐ近くの葉っぱにもチョウがいました。羽を閉じてとまっているコミスジです。羽を開くと名前のとおり3本の筋が現れました。
再び、ヒヨドリバナに目をやると、黒地に白いV字を描(えが)いたような模様を待つサカハチチョウがミドリヒョウモンと仲良く蜜を吸っていました。
いろいろなチョウの姿を夢中で追っているうちに、暑さをすっかり忘れていましたが、下山するとうだるような酷暑(こくしょ)が待っていました。きっと今夜も熱帯夜でしょう。せめてチョウたちが舞(ま)い飛ぶ、涼(すず)やかな夢でもみたいものです。
文責 増田 克也
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