ミズイロオナガシジミ 08.07.08




シッポを持った小さな蝶々



 梅雨の晴れ間に外に出てみると、南但馬自然学校の自然観察路で、羽の高さが1センチにも満たない小さなチョウに出会いました。その白っぽいチョウを何気なく眺(なが)めていましたが、後羽からピョコッと飛び出たシッポのようなユニークな突起(とっき)があることに気付きました。このチョウは、シジミチョウの仲間で名前をミズイロオナガシジミといいます。

 そっと近づきシッポをのぞき込むと、黒と白のちり紙を縒(よ)ったコヨリのような形をしています。時折(ときおり)そよぐ風に、右へ左へと揺(ゆ) れているところをみると、とても柔(やわ)らかなシッポなのでしょう。
 次に頭部に目をやると、縦長の大きな目と、ツンと上を向いた口がとても愛嬌(あいきょう)があります。足にはボーダーのタイツをはき、触角(しょっかく)までもが横縞模様(よこじまもよう)、そして先端(せんたん)はオレンジ色をしています。シッポが付いた羽ばかりに目を奪(うば)われていましたが、体もなかなかおしゃれです。

 チョウの愛好家たちは、このミズイロオナガシジミのように、森林に棲(す)む小さなシジミチョウの仲間を“ゼフィルス”と呼び珍重(ちんちょう)しています。ゼフィルスとはギリシャ神話の西風の精“ゼフィロス”からつけられた名前だそうです。確かに雑木林を飛ぶミズイロオナガシジミを見ていると、風をまとった可憐(かれん)な妖精(ようせい)のよう思えます。

 小さくなるミズイロオナガシジミを見送った帰り道には、恐竜(きょうりゅう)の時代からタイムスリップをしたような、ヒメシロゴブゾウムシが、白い鎧(よろい)を着た姿を現し、空には縄張(なわば)りを巡回(じゅんかい)するアオスジアゲハが目まぐるしく飛び回っていました。

文責 増田 克也


“自然のページ”のご意見ご感想をメールでお寄せください
Email mtajimashizen@pref.hyogo.lg.jp