「新年を迎えた朝」

兵庫県立青雲高等学校校長 高橋 一男

あけましておめでとうございます
  今年もよい年でありますようお祈り
      申し上げます
        平成十九年元旦

 教員生活38年をこの3月で終えます。
即ち、定年退職を迎える私は団塊世代の一期生にあたります。
 私は、新年を迎えた朝「今年も負けたらあかん」と自分に言い聞かせます。
 昨年、第54回全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会に本校から砂川真由美さんが出場されました。
 私も砂川さんの応援に行き、多くの定通制生徒の発表を聞く機会を得ました。
 全体で58名が発表しました。初めに5会場に分かれての会場別発表がありました。会場別発表会で、発表者が話す内容を聞いていますと、私は涙目で発表者の顔が二重・三重に映り、発表者の顔の輪郭が分からなくなってきました。

 各発表者からは、熱い思いが伝わる発表内容であり、若い人生経験の中で「そんな経験せんでもいいやろう」と何度も胸にこみ上げてくるものを抑えることが出来ませんでした。
 各人が発表後、全体会で12名が再度発表します。この全体会での発表を聞きながら、発表者全員に私は心から何度も「負けたらあかん」と応援しながら発表を聞いていました。
 さて、「負けたらあかん」ということで、私の38年を振り返ることにします。

 私は、教員生活のほとんどを阪神地区で勤務しました。ここでは、専門である陸上競技部の指導をしてきました。
 阪神地区では、名門報徳学園高校がいつも駅伝大会で頂点に君臨しています。何度も、この名門の報徳学園高校を破って優勝したいと思って厳しい指導を繰り返してきました。結果として、いつも負けましたが、その中でも報徳学園高校がゴールしてから「何分差まで追いついた」とか「今年は7区間のうち、区間賞をいくつか取ること」が出来たと思ったものです。
 今年も負けたけれども、「来年はもっと強いチームにするぞ」そして「負けへんぞ」と自分自身を奮い立たせてきました。

 いつも負けてばかりいますと、指導に力が入らないものですが、私自身特に駅伝の指導は別でした。ですから自分には、常に「負けたらあかん」と言い聞かせたものです。
この思いは、県大会・近畿大会を終えた日からも同じです。
 この38年間の教員生活においても、陸上競技の指導だけでなく、どのような時にも「負けらあかん」と自分自身を叱咤激励してきました。

 生徒の皆さん方は、今までに色んな苦労を背負い又若い時から人に言えないことも数多く経験しながらの人生だったと思います。

 私は、皆さんに「何が何でも頑張れ」とは言いません。が、言い換えるならば、私が60年のなかで、常に前を向いて生きていくために、自分自身に言ってきた「負けたらあかん」という言葉を、生徒の皆さん一人一人に伝えておきたいと思います。

 私は、何事にも「負けたらあかん」という気持ちを忘れなければ、人間強く生きることが出来ると思っています。

 私も、これからの人生の中で苦しいことも数多くあるだろうと想像しながら「今年も負けたらあかん」と自分自身に言い聞かせた新しい年の朝でした。