益川敏英【素粒子物理学:ノーベル賞】
「科学者は戦争で何をしたか」(集英社新書)
NHK取材班「原爆投下」(新潮文庫)
「敵艦見ゆとの警報に接し、連合艦隊はただちに出動これを撃滅せんとす。本日天
気晴朗なれども波高し」司馬遼太郎の「坂の上の雲」をお読みになった人なら、日本
海海戦の開戦を告げた、参謀秋山真之のこの名セリフを知っている高校生もいるかも
しれない。ノーベル物理学賞の益川さんが科学者の戦争加担の問題を叫んでおられま
すが、上の台詞のどこに科学者が参加しているのでしょうというのがクイズ。
答えは、秋山が付け加えたとされる「本日天気晴朗なれども波高し」というこの部
分。この部分は当日、気象台から旗艦「三笠」に打電された天気予報の棒読みだとい
うのです。気象学者も一緒になって海戦を戦っていたというわけ。参謀が目の前の風
景を口にしたんじゃなかったんですね。
物理学者に限らず、気象学であれ、船舶設計であれ、一生懸命戦争のために努力し
ていた。結果の象徴が「原爆投下」ですね。科学者が戦争に加担することに警鐘を鳴
らしたのは益川さんが初めてではありませんね。しかし、科学研究は善だが、戦争利
用は悪だという「科学研究」性善説を越えた、科学批判が今や必要かもしれませんね
。(くま)