その23

朝山実【ルポライター】

「パッチギ」(キネマ旬報社)

 
姜誠

「またがりビトのすすめ」(岩波書店)

映画になった「パッチギ」を在日の人の勝手な論理だと批判する人もいるらし

い。けれど、それなら『またがりビトのすすめ』も一緒に読んでしまおう。「パ

ッチギ」の突進と、人が一人で、さまざまな境界線を、突き破り、乗り越えて生

きてゆく「またがりビト」の主張が、どこで、どうぶつかり合うのか、どこで共

感するのか。読んでみないとわからない。ちなみにパッチギっていうのは「突き

破る」という意味の朝鮮語
であるらしい。

守りたいものや、守られたいものに囲まれて生きている人は感じないかもしれ

ないが、人が一人で、さまざまな境界線を越えて、自由に生きようとすると、突

破しなければならない壁が見えてくることもある。

「パッチギ」という言葉が爽快に響くのはそんなときかも。(くま)