その十六

対談:奥平康弘(憲法学のオーソリティ:東大名誉教授) 

vs 

木村草太(憲法学の若きエース;首都大学教授)

「未完の憲法」(潮出版社)

現在の高校生に限らず、普通の大人でも憲法なんかに関心を持つなんていうことは、ふつう

ありあえない。教員の免許のための資格単位として「日本国憲法」という科目を必修として習

得しなければならないから、何らかの形で職員室の皆さま方はベンキョウされたはずだが、職員

室で先生方と話していて、日本国憲法の前文を中学生だったか、高校生だったかの頃に、暗

唱させられたというと、「エーッ」と声が上がった。まあ、そういうもんだろう。もっとも、声を上げ

た先生が、一度読んでみようと思うとおっしゃっていたから、今の社会の雰囲気の中に、知らな

いままでは、ちょっと危ないんじゃないかという何かが漂っていることを、さすがに感じていらっしゃ

るということなのだろうが、高校生はどうなのだろう。

本書は、「ちょっと、憲法って何なの?」そんな疑問を持ち始めた人に、ちょうどいいんじゃな

いか。そういう本だ。
議論は冷静で常識的だけれど、素人が全く知らない憲法や立憲主義に

ついて、とても本質的、原理的な話題の展開だ。改憲論を主張していた、いわゆるタカ派の憲

法学者が何故、今夏の集団的自衛権議論で、違憲を主張したかもよくわかる。「未完の憲

法」という本書の書名が、社会と憲法の関係について、最も大切なことを指摘していることが理

解できれば、社会の動向にアクチャルな反応ができるようになるかもしれない。
(館長)