2015・神無月・その12
池谷裕二・鈴木仁志
『和解する脳』(講談社)
『進化しすぎた脳』(ブルーバックス)、『海馬』(新潮文庫)でブレイクした若き脳科学者池谷裕二さんが弁護士
鈴木仁志さんと対談した本。「社会脳」という言葉、概念が脳科学研究の学問用語として生ま
れつつあるのをご存じでしょうか。個々の脳のしくみから、人間が人間として活動している現場
における脳の働きを研究する分野が新しい脳科学の学問領域らしいのですが、そこで使われ始めてい
るキーワードらしいのです。そこで、弁護士と脳科学者の対談という、普通では思いつかな
い組み合わせが生まれたというわけです。
そこで二つ目の質問。ニューロエコノミクス (neurecmics)という言葉を知っているでしょうか。こ
れは経済学の用語。直訳すれば「神経経済学」。たとえば消費者の購買行動を脳の働きから分析し
ようという学問。お金儲けをそっちから研究しようというのは、ちょっと生々しい。ただ消
費行動や社会行動を心理学や社会心理学からアプローチの歴史は、すでに古いと言っていい
かもしれない。ここで二人が作った言葉は「ニューロジャスティス」、神経法学和解したり合意した
りする意思決定における脳のメカニズムの働きを考えてみようというわけ。『進化しすぎた脳』あた
りから読み始めたほうが面白いかもしれない。(館長)