参考資料 物質量の単位「モル」
モルmolという語は、molecule(分子)という語からできたものだが、現在では、原子・分子・イオンなどの粒子からできている物質の量の単位として用いられている。モルとはどんな単位か。また、モルと原子量・分子量・化学式量との関係について理解を深める。
- 原子の質量
1803年、ドルトン(イギリス)によって「物質は原子からできている」という理論が確立された。当時はまだ原子1個の質量が何gであるかを知ることはできなかったが、元素と元素との化合の質量の関係を調べることによって、原子の相対的質量…たとえば、マグネシウム原子の質量は、酸素原子の質量の何倍であるか…を知ることはできた。現在では原子1個の質量が何gであるかを知ることができる.たとえば、アルミニウム結晶中の原子配列のようすを]線で調べると、一辺の長さが4.0×10-8cmの立方体の中に4個の割合で原子が含まれていることがわかる。またアルミニウムの密度を調べると2.8g/cm3 である。このことからアルミニウム原子1個の質量は次のように計算される。
アルミニウム原子4個の入った立方体の体積 | × 密度 | アルミニウム原子4個の入った立方体の質量 | ÷ 4 | アルミニウム原子1個の質量 |
→ | → |
(4.0×10-8cm)3 | | (64×10-24 ×2.8) g | | 4.49×10-23 g |
- アボガドロ定数とモル
上記の計算の結果から、原子1個の質量が非常に小さいことが分かる。このことからも、私たちが天秤で質量を測ったり、通常実験に使用したりしている量の物質中には、多数の原子が含まれていることが想像できる。12gの炭素棒に含まれる炭素原子は何個か。1と同じ方法で測った炭素原子1個の質量は約2×10-23 gである。このことから計算すれば、12gの炭素棒に含まれる炭素原子の数は約6×1023 個となる。この数は、もう少しくわしい測定値から計算すると6.02×1023になり、これを「アボガドロ定数」とよぶ。そして鉛筆12本の集団を「鉛筆1ダース」とよぶように、6.02×1023個の原子の集団を「原子1mol(モル)」とよぶことにする。正確には、アボガドロ定数とは、質量数12の炭素原子集団12g中の炭素原子数である。
- 原子1molの質量と原子量
その他の原子について、原子1molの集団の質量は下記のようになる。
(アボガドロ定数は、6.02×1023/molとし、有効数字3桁で記す)
| 水素 H | 炭素 C | 酸素 O | アルミニウム Al |
原子1個の質量 | 1.67×10-24 | 1.99×10-23 | 2.66×10-23 | 4.49×10-23 |
原子1molの質量 | 1.0g | 12.0g | 16.0g | 27.0g |
この表から明らかなように、原子1個の質量は非常に小さな値だが、原子1molの質量は、
- 天秤で計れる量であり、
- グラム単位であらわせば、われわれになじみの深い原子では整数に近い数字になり
- 一番質量の小さい水素原子で1.0gになる。
そこで原子1molの質量をグラム単位で表したときの数値を「原子量」とよぶ。
- 原子の質量比
炭素原子1個の質量を12.0とし、これを基準にして他の原子1個ずつの質量比を求めてみると、
| 水素原子 | 炭素原子 | 酸素原子 | アルミニウム原子 |
原子1個の質量 | 1.67×10-24g | 1.99×10-23g | 2.66×10-23g | 4.49×10-23g |
原子1個ずつの質量比 | 1.0 : | 12.0 : | 16.0 : | 27.0 |
ここで求めた原子の質量比の値は、3.で求めた原子量の値と一致する。このことから原子量に
ついて次の2つの定義は、結局は同じことだと理解できる。
- 原子量とは、原子1molの質量をグラム単位であらわしたときの数値である。
- 原子量とは、炭素原子(厳密には質量数12の炭素原子)の質量を12としたとき、他の原子の相対的質量である。
- 分子量
原子の場合とまったく同様に、分子6.02×1023個の集団を分子1molとよび、その質量をグラム単位であらわした数値を「分子量」という。
水分子H2Oを例にとって、分子1molの質量を計算してみよう。
H2O分子 1個 中の原子数 | は | H 原子 2個 | と | O 原子 1個 |
H2O分子mol中の原子数 | は | H 原子 2mol | と | O 原子 1mol |
H2O分子molの質量 | = | H 原子 2mol の質量 | + | O 原子 1mol の質量 |
= | H 原子量 1g × 2 | + | O 原子量16g × 1 |
= | 18g | ∴ H2O分子量= 18 |
上記の計算から、「分子量は、分子中に含まれる原子の原子量の総和」であることがわかる。
- [分子の分子量]
- ただし、原子量は、H=1 C=12 O=16 S=32
O2= 16×2=32 CH4= 12+4= 16 CO2= 12+32= 44 SO2= 32+32= 64
- 化学式量(式量)
塩化ナトリウムNaClのようなイオンからできている物質には分子はないが、組成式で示されるイオンの組について分子と同じように、たとえばナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl-の対でできているNaClの6.02×1023個を「NaCl 1mol」という。電子の質量は、原子や原子団の質量と比べて無視できるほど小さいので、イオンの質量は、そのイオンをつくっている原子や原子団の質量と同じと考えてよい。そこでイオン1molの質量はそのイオンを構成している原子の原子量の総和と考えてよいことになる。従って、組成式で示されるイオンの組1molの質量をグラム単位で表したときの数値をその物質の「化学式量」または単に式量ということにすれば「化学式量(式量)は組成式中に含まれる原子の原子量の総和」である。
- [イオンから出来ている物質の化学式量]
- ただし、原子量は H=1 C=12 0=16 Na=23 Cl=35.5 Ca=40とする。
NaCl:23+35.5=58.5 NaOH:23+16+1=40 CaCO3:40+12+48=100
|