23.だ腺染色体の観察

[目的]ユスリカの幼虫に見られる巨大染色体を観察し、染色体についての理解を深める。
[器具・材料]
 ユスリカの幼虫(アカムシ)
酢酸オルセイン
[準備および操作]
1)スライドガラスに幼虫を1匹のせ、からだを押さえ、頭部先端を引き抜く。
2)内容物から、透明でハート型をしただ腺を見分け、染色する。
3)軽く押しつぶして観察する。
 ※  頭部・胴部などはろ紙で取り去り、透明のだ腺のみをスライドガラス上真ん中に残す。
だ腺染色体の特徴
(1)分裂しない核にも常に染色体が現れている。
(2)非常に大きく、普通の染色体の100〜150倍ある。
(3)相同染色体が対合しており、体細胞で見られる染色体の半数である。
(4)染色すると多数の横しまがみられるが、この横しまの位置が遺伝子の位置と一致していると考えられる。また、しま模様の分かりにくくなっている部分はパフと呼ばれ、DNAの転写がさかんに行われている。
[留意点・工夫点]
ユスリカの仲間にはオオユスリカとセスジユスリカなどがおり、だ腺の形も違う。
6月ごろ、水溜りや溝などで採集する事ができるが小さい。
購入するには、教材業者や釣り餌業者に発注するとよい。
時々水を補給し、冷蔵庫で保管すれば2〜4週間は生きている。しかし、だ腺は幾分小さくなる。
だ腺は透明の小さなものなので、引き抜いた内容物が乾いてしまうと見つけられない。スライドガラスに水を補充しても良いが、手早く操作するほうがおすすめ。
だ腺の見分け方
 ・  背景を黒くすると、だ腺は見えなくなるが、腸などは白く見える。
 ・  光源に透かすとだ腺はすこし光って見え、腸などは白く見える。
ショウジョウバエの幼虫でも観察できるが、全体が小さいので見つけるのに苦労する。
ユスリカ(アカムシ)についての資料(2005年研修会追加資料)
<補足実験>
――二重染色でDNA、RNAの分布を見る――
1) だ腺を45%酢酸で2分間固定する。(染色体が鮮明に見える)
2)酢酸をろ紙で吸い取る。
3)メチルグリーンピロニン染色液を滴下して5分以上待つ。
4)押しつぶして観察する。
青緑色の部分はDNA、桃色の部分はRNA
メチルグリーンピロニン染色液の作り方
 
メチルグリーン75rの割合で溶かす
ピロニンY12.5r
ウンナ−パッペンハイム溶媒50ml
  
ウンナ−パッペンハイム溶液
96%アルコール1ml
グリセリン10ml
0.5%フェ−ノール溶液40ml
 必ず使用時に調合すること。栓をして冷蔵庫で保管すると1週間は使用できる。
――だ腺をそのまま観察する――
 だ腺を取り出して染色せずにそのまま検鏡。(カバーガラスをかけない)
 1つ1つの細胞と染色体が確認できる。