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甲冑作品解説
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卯の花威大鎧 十六間星兜付(うのはなおどしおおよろい じゅうろっけんほしかぶとつき)

江戸時代後期(19世紀) 胴高32.0cm 甲高13.5cm 兵庫県立歴史博物館蔵
兜吹返
獅子形香炉
兜前立(鍬形)
喉輪
胸板
栴檀の板
鳩尾の板
籠手先金物
弦走絵韋
草摺(前)
草摺裾金物
臑当、貫
眉庇、前立(鍬形)台
兜吹返の三つ葉葵紋
障子板
大袖
威毛、耳糸、小札
籠手
籠手肘当金物
脇楯
脇楯の壺板
兜の鉢
兜の総角
の裾金物
押付
押付の金物
総角
総角付の金物
大袖
大袖冠板の飾り金物、八双金物
大袖の笄金物
大袖の裾金物
脇板
長側(衡胴)、弓手の草摺
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正面 右面 背面 左面

 この甲冑は、草摺(くさずり)が4間、脇楯(わいだて)がつくなど大鎧の特徴を備えたものですが、制作年代は19世紀になります。18世紀の末以降、古物研究の深化とともに、古式を模した甲冑が好んで注文・制作された時期があり、この甲冑もそうした時流の中で生み出された「復古調」と呼ばれる作品の一つです。この甲冑の場合、小札(こざね)を綴る威毛(おどしげ)の色が卯の花色(=白色)で、形式が大鎧なので、「卯の花威大鎧」という名称になります。

 またこの甲冑は、兜の鉢のみは鎌倉時代の古物を転用しています。兜は星兜で、の鉄板が合わせて16枚で構成されているので、「十六間星兜」という名称になります。

 この甲冑は播磨国明石(兵庫県)藩主の松平家に伝来したと伝えられています。兜の左右の吹返(ふきかえし)には、飾り金物の上に徳川一門を示す三つ葉葵紋が据えられています。兜の天辺(てへん)には大型の獅子形香炉がつけられており、臑当(すねあて)も実際に着用できるものではないなど、実用品ではなく装飾品であることが明らかですが、形式としては大鎧を模して作られています。

 この甲冑は装飾の豪華さがみどころです。草摺や大袖、兜の(しころ)の裾金物、大袖の冠板(かんむりのいた)鳩尾(きゅうび)の板栴檀(せんだん)の板など、各所に牡丹文様を精緻に高彫りした飾り金物がふんだんに施され、威毛の白色によく映えています。大名道具として鑑賞するにふさわしい甲冑といえるでしょう。