五社明神の国造り
泥海の大蛇とのたたかい

 大昔、まだ豊岡(とよおか)のあたりが、一面にどろの海だったころのことです。

 人々は十分な土地がなくて、住むのにも耕すのにも困っていました。そのうえ悪いけものが多く、田畑をあらしたり、子供をおそったりするので、人々はたいへん苦しんでいました。この土地を治める五人の神様は、そのようすを見て、なんとかしてもっと広く、住みよい所にしたいものだと考えました。
 そこで神様たちは、床尾山(とこのおさん)に登って、どろの海を見わたしてみました。すると、来日口(くるひぐち)のあたりに、ものすごく大きな岩があって水をせき止めています。
 「あの大岩が、水をせき止めているのだな」
 「あれを切り開けば、どろ水は海へ流れるにちがいない」
 「そうすれば、もっと広い土地ができるだろう」
 「それはよい考えだ。どろの海がなくなれば、たくさんの人が安心して暮らせる」
 神様たちはさっそく相談して、大岩を切り開くことにしました。

 大岩を断ち割り、切り開くと、どろ海の水はごうごうと音を立てて、海の方へ流れ始めました。神様たちはたいそう喜んで、そのようすを見ていました。

 ところが、水が少なくなり始めたどろ海のまん中から、とつぜんおそろしい大蛇(だいじゃ)が頭を出して、ものすごいうなり声を上げながら、切り開かれた岩へ泳ぎはじめました。そして、来日口に横たわって水の流れをせき止めてしまったのです。
 神様たちはおどろきました。
 「この大蛇は、どろの海の主にちがいない」
 「これを追いはらわねば、いつまでたっても水はなくならないぞ」

 神様たちがそろって、大蛇を追いはらおうとすると、大蛇はすぐにどろにもぐってにげてしまいます。あきらめてひきあげると、大蛇はまたあらわれて、水をせき止めてしまいます。神様たちはたいそうおこりました。
 すきをみて大蛇に飛びかかり、神様たちは、とうとう大蛇を岸に引きずり上げてしまいました。そして頭と尻尾(しっぽ)をつかんで、まっぷたつに引きちぎろうとしましたが、大蛇もそうはさせまいと大暴れします。それどころか、太くて長い体を神様たちに巻き付けて、しめころそうとするのでした。
 五人の神様と大蛇は、上になったり下になったりしながら、長い間戦いました。大蛇が転がるたびに、地面は地震(じしん)のようにゆれます。けれども五人が力をあわせ、死にものぐるいでたたかいましたので、大蛇もしだいにつかれてきました。そこで神様たちが、大蛇の頭と尻尾にとびかかって、えいっと力をこめて引っ張りますと、さしもの大蛇も真っ二つになってしまいました。
 こうして、どろの海の水は全部日本海へと流れ出し、後には豊かな広い土地が残りました。そしてどろの海のまわりにはびこっていた悪いけものたちも、みなにげ出してしまいましたので、人々はたいへん喜び、それからは安心して暮らせるようになったということです。

 このできごとをお祝いして、毎年八月に、わらで大蛇の姿をした太いつなをつくり、村人みんなでひっぱってちぎるというお祭りが、行われるようになったということです。