昔、丹波篠山(たんばささやま)の真南条(まなんじょう)村に、助太郎(すけたろう)という働き者の木挽(こび)きがおりました。木挽きですから、毎日山で木を切るのが仕事でした。

 ある日山へ行ってから、なたを忘れてきたことに気がつきました。なたを取りに家へもどってみると、およめさんがぼたもちを作って食べています。助太郎がこっそりのぞいているのを知らず、「残りはまたあとで食べよう」と、おし入れにしまいました。

 その日の夕ご飯のとき、およめさんはぼたもちをかくしたまま、出してくれません。そこで助太郎は、わざと鼻をひくひくさせながらおし入れに近づき、「なんだかうまそうなにおいがするぞ」と言って、ぼたもちを取り出しました。
 びっくりするおよめさんに、助太郎は、「今日、山で天狗(てんぐ)に、何でもかぎ当てる術を教えてもろうたんや」と言いました。もちろんうそに決まっていますが、およめさんは、すっかり信じこんで、近所の人たちにも話してしまいました。

 しばらくして、となり村の長者の家から使いが来ました。
 「長者の娘さんの、金のかんざしと銀のくしがのうなったんじゃ。助太郎さんの鼻でかぎあててもらえんやろうか。」
さあえらいことになったと、助太郎は思いました。どうしたらよいかと思案していると、夜になって、長者の家ではたらく女の人がやってきました。
 「どうしたんじゃ。」
 「はあ、私はかんざしとくしがほしなって、盗んでしまいましたんや。蔵の北側にある石の下にかくしてあります。どうか私のことは、言わんといてください。」
 女の人は泣きながらたのみました。
 助太郎は、「人のものを盗むのは悪いこっちゃ。そやけど、正直に言うたんやから、あんたのことは言わんとく」と答えました。

 あくる日、助太郎は長者の家へ行って、たちまちかんざしとくしを見つけましたので、長者はたいへん喜んで、たくさんのお礼をくれました。

 助太郎のうわさは、とうとう都まで伝わって、殿様(とのさま)の耳にも入りました。ある日、助太郎の所へ殿様の使いがやってきました。
 「家宝の刀がなくなって困っております。何とかさがしてはもらえませんか。」
 助太郎は弱りました。けれども殿様のたのみではことわるわけにはゆきません。仕方なくしたくをして、出かけてゆきましたが、どうすればよいかわかりません。都に上るとちゅうの小さなお宮さんで、助太郎は手を合わせて、「どうかお助けください」と一心にいのりました。

 助太郎がお宮さんのかげでひと休みしていると、三人の侍が通りかかりました。侍たちが、何かひそひそと話しているので、助太郎が思わず聞き耳をたててみると、「刀は、屋敷の梨(なし)の木の根本に埋めてある。いくら助太郎でもわかるまい」という声が聞こえてきます。
 助太郎は大喜びです。思わずお宮さんにお礼を言って、都に向かいました。

 殿様のお屋敷についた助太郎が、たちまち刀をさがしあてたのはもちろんです。殿様は大喜びして、たくさんのほうびをくれました。

 こうして真南条に帰った助太郎は、大きな屋敷を建てて暮らしたということです。その屋敷あとは、今でも真南条の村に残っています。