郷土芸能部門活動報告

    郷土芸能部門委員長 

    (県立三原高等学校)   中 西 英 夫

  近畿総文に明け、近畿総文に暮れた一年であった。平成4年度に発足した本部門の加盟校は、県立播磨農業、県立須磨東、県立志知、県立三原、県立浜坂、県立千種、市立兵庫商業、市立神戸西の8校。果たしてこの弱小部門で近畿総文の運営ができるのか。しかも、これまでの近畿総文では郷土芸能部門の発表会はなく、はじめての開催である。出演校数の予想すらつかない中での、不安を抱いてのスタートであった。

しかし、小所帯ゆえに加盟校の顧問全員が一丸となって全力で取り組み、小回りのきく、まとまりのよさを発揮して、発表会を成功させることができた。近畿総文の成功は本部門にとって大きな自信となり、これからの各校の活動にも大きな刺激を与えてくれるものと思う。

  近畿総文に先立って行われた全国総文(奈良)には、本部門から市立兵庫商業高校龍獅團が出場し、超高校級の演技を披露して好評を得た。

 

1.近畿高校総合文化祭

 

1)近畿総文に向けて

  6.27 第1回運営委員会(サンピア明石)

 10. 7 第2回運営委員会(私学会館)

 10.30 会場スタッフとの最終打ち合わせ

 11.15 実行委員会、搬入、仕込、リハーサル

 12.12 第3回運営委員会(私学会館)

 

2)第17回近畿高校総合文化祭郷土芸能部門

 月日  11月16日(日) 11:00〜16:40

 会場  神戸市中央区浪花町 神戸朝日ホール

 参 加 校 14校(県内8校,県外6校)   

 参加生徒 196人(県内116,県外80)

 観客人数 251人

 開会式 挨拶(県高文連郷土芸能部長溝口節夫)

     歓迎の言葉  (兵庫商業高校大野新司)

     講師紹介

  @兵庫県立播磨農業高校(播州歌舞伎) 

  A和歌山県立紀北農芸高校(和太鼓)  

  B奈良県立田原本農業高校(御田植舞) 

   C福井県立勝山高校(和太鼓)       

   D兵庫県立志知高校(淡路だんじり唄) 

  E兵庫県立三原高校(人形浄瑠璃)   

   F徳島県立城北高校(人形浄瑠璃)   

  G京都府立綾部高校(和太鼓)     

   H兵庫県立浜坂高校(麒麟獅子舞)   

  I大阪府立美原高校(和太鼓)     

   J神戸朝鮮高級学校(朝鮮舞踊)     

  K兵庫県立千種高校(和太鼓)     

   L神戸市立兵庫商業高校(中国獅子舞) 

  M神戸市立神戸西高校(和太鼓)    

 閉会式 講師講評(佐久川昌彦、吉川周平)     閉会の言葉(志知高校菅原由紀子) 

 

 県内出場校は、昨年度県総文出場校のうち1校が部員不足のため参加できなかったが、新たに市立神戸西高校が参加し、昨年と同数の8校となった。県外出場校も当初の予想を超える6校の参加を得た。神戸朝鮮高級学校にも昨年に引き続き出演いただき、地域・演目ともバラエティーに富んだ、国際色豊かな発表会となった。会場は市内中心部にあり、観客のアクセスは申し分ないが、搬入搬出の混乱が予想されたので、県教育委員会を通じて、近隣のフィリピン総領事館所有地への車両乗り入れを許可いただく等の対策をとった。5時間40分に及ぶ長丁場であったが、運営は、実行委員(教師)18名、司会2名(甲南女子高校)のほか、ボランティア生徒22名の協力を得てスムーズに進行した。

  懸案の観客動員も、チラシ900枚を学校関係のほか、市内の公共施設、老人クラブ、婦人会、各種文化団体、個人に送付してPRに努め、また三原高校にはPTA研修旅行にとり上げていただいたり、開演前とお昼に会場前でPR演技やチラシを配って呼び込みをした結果、251名というまず満足すべき数を得た。演技水準も各校とも予想以上に高く、全国総文でも最優秀賞または優秀賞を狙える学校も数校あった。観客もレベルの高さに驚き、郷土芸能の伝承に励む高校生の真摯な姿に大いに感銘を受けた様子で、アンケートには、感動、驚き、激励、そして感謝の言葉が綴られ、神戸新聞の「発言」欄にその感動を投稿された方もいた。高校生に対する認識を新たにしていただけたことと思う。

  従来の県総文では講師を招いていないが、今回は、神戸新聞社文化部長佐久川昌彦氏と全国総文の審査員もされている徳島文理大教授吉川周平氏を招聘し、それぞれ全般的な講評と個別の講評をいただいた。講師からも「全国総文に比べても何ら遜色ない」と絶賛いただいた。

 また、会場にはこの発表会のために県立農業高校園芸科の丹精されたパンジーがプランターで101個飾られ、閉会後は観客や参加生徒におみやげとして配布して喜ばれた。

  近畿総文初めての郷土芸能部門発表会だったが、企画・運営・演技内容とも満点に近い出来映えだったと自負している。郷土芸能に取り組む県外の高校は極めて少ないが、近総文での本部門の発表会を今後も是非継続してほしいと思う。

 

3)出演生徒の感想

  私たちは、近畿高校総合文化祭郷土芸能発表会の14校のトップとして「寿式三番叟」を演じました。ホールは広く、たいへんやりがいのある会場でした。緊張しましたが、ミスもなく無事終わりました。他校の演技を見ていると太鼓が多いと思いました。たくさんの方々に見ていただき、とてもよかったと思いました。

     (県立播磨農業高校 3年 秋山英一)

  今回の近畿大会では、県大会では見ることのできなかった他府県の高校生の郷土芸能を見ることができ、たいへん勉強になりました。形は違っても郷土芸能にふれ、学ぶことは皆同じなのだと感じました。これからも2回3回と続いてくれればと思います。そしてもっと多くの方々に見ていただきたいと強く思いました。

           (県立志知高校 3年 菅原由起子)

  私は普段なかなか他の伝統芸能を見る機会がないので、近畿高校総合文化祭が開かれるのを楽しみにしていました。きっと他の部員達も同じ気持ちだったと思います。同じ世代に一生懸命、伝統芸能の継承に励んでいる人がこんなにもたくさんいるのだと思うと心強いし、負けてはいられないなぁと思いました。

            (県立三原高校 2年 長尾千夏)

 近畿総文に向けて本格的に練習を始めたのは3年生が引退した2学期からでした。メンバーの多くは1年生で、週1回の練習を頑張って何とか間に合わせました。重い獅子頭をゆっくり左右対称に動かす呼吸が一番むずかしく、囃子も笛の高音を出すのに苦労しましたが一生懸命演じました。神戸の人々に見てもらえてとても満足です。今年も淡路をめざして頑張ります。    (県立浜坂高校 2年 杉岡憲正、内田 聡)

  日本の高校生の皆さんの前で踊るという経験があまりなかったので、今回の出演はとても嬉しく思いました。私たちの誇りである朝鮮舞踊を見ていただけたことはもちろん、素晴らしい和太鼓などに出演していた同じ高校生の方たちの姿を見ることができてよかったです。あとで話しかければよかったと少し後悔しました。

        (神戸朝鮮高級学校 2年 李 美恵)

  「太鼓っていいな。」私達は、神戸西高校と一緒に街頭で寄せ太鼓を打ちました。初めは無関心に通り過ぎていた人達も足を止め、リズムに合わせて踊りはじめ、知らないうちに都会の一角に人の「和」ができていました。ホール内でも唄あり踊りあり浄瑠璃ありで、演じる側見る側の垣根を越えて会場が一つになりました。

        (県立千種高校 2年 新免明子)

  第17回近畿高等学校総合文化祭は本当によい思い出と経験をさせていただきました。僕たちが日頃取り組んでいる郷土芸能の技をどれだけ発揮できるのかとても不安でしたが、観客の皆さんのおかげで満足のいく演技をすることができました。僕たち龍獅團はこれからもさらに上を目指し、頑張って行きます。

         (市立兵庫商業高校 2年 大野新司)

  今回、近畿総文祭に出演し、太鼓クラブの多さに驚いた。神戸では高校生の太鼓というのは珍しいこともあって自らの枠にはまりがちだったが、他の太鼓文化への関心や負けたくないというライバル意識、同じ太鼓を愛する者への親しみと、終了後の思いは一杯だ。この思いを大事にこれからの飛躍に結びつけたいと思う。

        (市立神戸西高校 2年 溢田圭子)

 

4)観客アンケートより

☆ 皆熱心、真剣に取り組んでいて感動。お上手です。思わず泣いたこともありました。ガンバレ。(81歳女)

☆ いやなことばかりのこの頃です。今日はすばらしい若者達の活躍ぶりを見せて頂いて有難うございました。年齢が20歳ほど若返りました。この若い人たちの世界が楽しみです。期待しております。若者達のエネルギーを頂いてまいります。有難うございました。(80歳女)

☆ 郷土芸能は日本の素朴な心。その灯を若い力でいつまでもともしてほしい。生徒の真摯な熱演に、はじめからとうとうおしまいまで席に釘づけでした。(79歳男)

☆ 若さみなぎる力一杯の芸能を見せていただき感動いたしました。「すばらしい」の一語でございます。心和む一日でございました。ありがとうございました。(72歳女)

☆ 本日は最高にしあわせでした。劇場での催物より値打ちがありました。満員と思って来たらすいていてびっくり。是非また行きたい。遠くても見にいきますよ。(72歳男)

☆ 本当に素晴らしい!!感動致しました。現代の高校生を見なおす思いです。指導される先生の熱意も感じられ、郷土愛をほとばしらせての高校生同志のすばらしい競演は生き方にも影響すると思います。(61歳女)      

☆ 一筋に進む姿が美しい。どの演目にも感動がある。心身ともに洗浄される思いだ。それは拙さが一筋の思いに支えられているからだろう!(59歳男)

☆ 学業の合間によくもこれだけマスター出来たものだと感心しました。これからも永く伝えて下さい。(50歳男)

☆ すごいです。高校生の演技だとは思えません。今日は来て良かったです。心が豊かになりました。他の高校生も、もっとこういう郷土芸能に関心を持っていただければいいと思います。本当にありがとうございました。(44歳女)

☆ みなさん表情が輝いていて、和太鼓など音がズンズンと心にまでひびいてきてすごく良かった。(17歳女)            

☆ すごくよかった!それぞれ迫力があった!獅子がめちゃめちゃかわいかった!(14歳女)

 

2.第21回全国高校総合文化祭郷土芸能部門

月 日  8月9日〜10日

会 場  奈良県かしはら万葉ホール

参加校  国内 43校 海外 2校  計45校

演 目  民族舞踊2校.歌舞伎1校.萬歳1校.    人形芝居1校.獅子舞2校.民謡2校.

        神楽3校.舞踊13校.太鼓20校.

受賞校  最優秀  熊本県牛深高校(ハイヤ節)

        優 秀  岩手県雫石高校(参差踊)

          同  富山県平高校(麦屋節ほか)

              日本航空高校(太鼓)

        優 良  沖縄県八重山高校(笠踊ほか)

         同  鳥取県日野産業高校(神楽)

              大分県碩南高校(神楽)

              岩手県花巻農業高校(鹿踊)

 

     全国高校総合文化祭の感想

      市立兵庫商業高校龍獅團顧問  阪口智敬

 

 郷土芸能部門に出場し、多くの高校生たちの郷土芸能を見て、そのレベルの高さに驚きと感動を覚えました。各地に伝わる郷土芸能を高校生たちが取り組むことは大変意義深く、よい傾向にあると思います。他校の取り組みを見学できたことは大変な刺激になりました。

  ただ惜しいのは、まだまだ知名度が低いためか、ご覧頂ける方が少ないということです。本来であれば大規模ホールでの発表に充分な演技力とレベルを備えているにもかかわらず、観客動員数の少なさから中規模ホールでの開催となっており、より多く方々にご覧頂けるよう、高校生が取り組む郷土芸能をもっとアピールする手だてを考え実行する必要性を感じました。

  さて、本校の獅子舞は、内容的にも技量的にも最高、ほぼ完璧な演技を行ったにもかかわらず、残念ながら全く評価されず、東京公演まで行くことができませんでした。日中国交正常化25周年記念の節目の年であったり、神戸では長江流域との交流を推進するプロジェクトも進行しており、まさに神戸の土地柄を活かした全国に誇れる郷土芸能であるアジアの獅子舞を、審査員が「郷土芸能」ではなく、「日本の伝統芸能」に固執してういるようで、今後の全国大会出場について考えさせられました。

  次年度以降、兵庫県代表として全国大会に出場される団体には、是非、東京公演を目指して頑張って頂きたいと願います。

 

 

    全国高校総合文化祭に参加して

         市立兵庫商業高校 2年 永吉由香里

 

 「郷土芸能」と聞くと、皆さんはどのように考えるでしょうか。古く昔から伝わるもの、奥が深いもの見てて眠たくなってしまうもの、と人それぞれでしょう。私たち兵庫商業高校は、太鼓の演目が多い中、中国獅子舞を披露させていただきましたが、やはり変わったことをするということに少々プレッシャーを感じ、またやる気にもなりました。獅子舞の魅力は見ている方々に感動を与えることです。郷土芸能の原点もそこにあるのではないでしょうか。大切なのは、どれだけ自分のしていることを誇りに思っているか、そしてどれだけ周りの人々を引き込むことができるか‥‥。今回のこの大会で、少なくとも私は感動を与えられたと思います。