郷土芸能部門活動記録

   郷土芸能部門委員長 

  (県立志知高等学校) 中村勝年

 平成4年度に発足した本部門の加盟校は、県立播磨農業(播州歌舞伎)、県立須磨東(一弦琴)、県立志知(淡路だんじり唄)、県立三原(淡路人形浄瑠璃)、県立浜坂(麒麟獅子舞)、県立千種(和太鼓)、市立兵庫商業(中国獅子舞、新加坡龍舞)、市立神戸西(和太鼓)の8校。加盟校こそ少数ではあるが、多様性と、郷土色・国際色豊かな芸能が犇めき合っている。

 平成10年8月に開催された第22回全国高校総合文化祭には県立三原高校と市立神戸西高校が出場し、県立三原高校は平成5年に続き、2度目の優秀賞(文化庁長官賞)を受賞し、同月、国立劇場で開催された優秀校東京公演に出場する栄に浴した。神戸西高校は惜しくも賞は逸したものの、観客から好評を得た。

 平成10年11月に大阪で開催された第18回近畿高校総合文化祭には市立兵庫商業と県立千種高校が出場した。

 平成10年11月に洲本で開催された第22回兵庫県高校総合文化祭第5回郷土芸能発表会には加盟校に加え、特別出演として神戸朝鮮高級学校(朝鮮舞踊)、広田小学校(五尺音頭)の参加を得た。

1.兵庫県高校総合文化祭

1)兵庫県総文にむけて

 10.06.30 第1回運営委員会(サンピア明石)

 10.09.28 第2回運営委員会(洲本市民会館)

 10.11.05 会場スタッフとの最終打合わせ

 10.11.14 搬入、仕込み、リハーサル

 11.01.14 第3回運営委員会(西宮東高ホール)

2)第22回県高校総合文化祭郷土芸能発表会

月 日11月14日(土)13:00〜16:30

会 場 洲本市本町 洲本市民会館

参加校9校(加盟校7校、特別出演2校)

参加生徒 157人(うち加盟校123人)

観客人数 215人

  プログラム

開会式

  歓迎のことば(三原高校 長尾千夏)

  挨拶・講師紹介

 (県高文連郷土芸能部長大住昌義)

  @兵庫県立播磨農業高校(播州歌舞伎)

  A兵庫県立浜坂高校(麒麟獅子舞)

  B兵庫県立千種高校(和太鼓)

  C組合立広田小学校(五尺音頭・五尺踊)

D兵庫県立三原高校(淡路人形浄瑠璃)

  E兵庫県立志知高校(淡路だんじり唄)

  F神戸市立兵庫商業高校(新加坡龍舞)

  G神戸朝鮮高級学校(朝鮮舞踊)

  H神戸市立神戸西高校(和太鼓)

(CとGは特別出演)

閉会式 講師講評

 (前洲本市立淡路文化史料館長 武田信一)

 出場校は加盟校の7校、特別出演の2校で合計7校となった。特別出演として、今年は広い年代での文化交流の輪を広げるため、組合立広田小学校の参加を得た。神戸朝鮮高級学校にも昨年に引き続き参加いただき、国際色豊かな発表会となった。

 会場は市内中心部にあり、明石海峡大橋の開通により交通アクセスも申し分ない。演技は3時間程度で、持ち時間は各学校15分程度しかなかったが、予定通りスムーズに進行した。運営は加盟校顧問16名と 、司会2名(三原高校放送部)があたった。

 観客誘致も、チラシ5000枚を学校関係、淡路島内の公共施設、各種イベント参加者、個人に配布し、さらにはインターネット、オフトーク、新聞を利用しての宣伝に努め、215名というまずまずの成果を収めることができた。全国総文で優秀賞を獲得した三原高校をはじめ、演技水準が全国レベルの学校が犇めき合っている。アンケート結果を見ると、観客も演技レベルの高さに驚き、郷土芸能を受け継いで頑張っている高校生に感動したとの声が大変多かった。郷土芸能発表会が幅広い年齢層から支持されていることが明らかとなった。

 今回の県総文では講師として前淡路文化史料館長の武田信一先生をお招きし、各校の郷土芸能の歴史を踏まえ、幅広い見地でご講評をいただき、今後の活動の指針となった。

 会場の前には県立三原高校と県立淡路高校がが丹精を込めて育てた菊などの花が飾られ、当日こられた観客の方々に大変喜んでいただいた。

 淡路は「淡路人形浄瑠璃」「淡路だんじり唄」など郷土芸能に熱心な土地柄であり、私達としても、今回の郷土芸能発表会を是非とも成功させたいと念願していた。来て頂いた観客の皆様には100%満足いただいたことは、今後の励みになったように思う。加盟校はまだ8校と少数ながら、兵庫商業の龍舞など新たな取り組みも見られ、部門としては多様性に富んだ活力のある学校が集まっている。演技としても郷土色・国際色豊かな内容となっており、日本の再発見、異文化理解のために本部門が今後果たすべき役割は大きいと感じている。今後、この郷土芸能発表会をより多くの人に見て頂き、私達が発信するメッセージを是非理解して頂きたいと思っている。

3)出演生徒の感想

 郷土芸能は、私達の歌舞伎以外にも沢山あることを知り、とても良い勉強になりました。 1年生の時から習っているは、最初、とても難しかったのが、今では簡単に踊れるほどになりました。3年間のクラブ活動を後輩に引き継ぎ、同じような感動と喜びを体験したいです。

(播磨農業高校 3年 道清賢二)

 浜坂高校は麒麟獅子舞を発表しました。獅子舞は二頭舞で左右の動きを合わせるのはとても難しく、美しくゆったりと舞うには想像以上に力を必要とします。そのために少ない練習時間の中、全員真剣に取り組んできました。現在の出来に満足をすることなく今後も更に練習を重ね地域の伝統を受け継いでいきたいです。

(浜坂高校 3年 杉岡憲正)

 僕は、他校の出し物を見た時驚愕しました。やはり、適切な指導の下で演じたのでしょうか、広大無辺な高校生の力を思い知らされました。こういった事だけでなく、様々な面で活躍できると思います。そして、再度機会があれば共演したいです。

(千種高校 2年 杉本秀秋)

 各校の皆さんが、自分の郷土の芸能に誇りを持ち、技を磨き上げ、力一杯演じる姿は眩しい程輝いて見えました。特に私はシンガポール龍舞に衝撃を受け、私も仲間に入りたいと思いましたが、郷土芸能はその地域の人にしかできない特別なものです。私達は伝統を受け継ぐ者として今以上に精進が必要だと思いました。

(三原高校 2年 谷田裕美)

 今回のように郷土芸能の後継者として総合文化祭へ参加できたこと、部員一同たいへんうれしく思っています。今日の郷土芸能部があるのは私達の先輩・先生方・岡本幸雄師匠のおかげです。私達はプロではないけど、私達なりに今回も頑張って歌いました。まだまだ未熟な面も多々ありますが、応援よろしくお願いします。

(志知高校 2年 坂川奈美)

 今まで獅子舞を中心に活動してきましたが、今年はシンガポール龍舞を習いに行った事で、新しい一歩を踏み出す年となりました。そんな年にこの大会で龍舞をすることは今まで以上に不安と緊張で一杯になり初心に帰って演技が出来たと思います。習って間もない龍舞ですが、これから伝統芸能として成長させていきたい。

(市立兵庫商業高校 3年 永吉由香理)

 演奏目「風雪」は、その名の通り、草木や生き物が眠る冬、大太鼓に大地を思い、中・桶桐太鼓に風を感じ、力の限り勇気と希望を持って突き進んで行く私達の姿を表現しています。私達は、6人という少人数ですが、いろいろな願いを込めて懸命に叩き、舞台の最後を締めくくる事ができて、とても嬉しく思いました。

(市立神戸西高校 2年 木村真弓)

 今回、総合文化祭に出演して、私達の大好きな朝鮮舞踊を多くの人に見ていただくことができて、本当に嬉しく思いました。日本の方たちの公演も素晴らしく、同じ高校生とは思えませんでした。これからも、お互いの文化を理解しあえる機会がたくさんあればいいと思います。

(神戸朝鮮高級学校 2年 金 智華)

4)観客アンケートより(一部抜粋)

○高校生の皆さんの生き生き輝いた笑顔が大変印象に残りました。大変素晴らしい舞台でした(40代女性)。

○若い人のエネルギーを感じました。初めて見るものが多く、感激しました。ありがとうございました(40代女性)。

○どの学校の方も一生懸命で演じられる姿が清々しく、若さあふれて感動しました(40代 女性)。

○よくやっている。感激した(40代男性)。

○小さい子供が感動しました(30代女性)。

○郷土芸能を受け継いで頑張っている高校生を観て感動しました(50代男性)。

○伝統を守るために小・中からも(発表会を)やればよい(50代男性)。

○みなとてもたのしかったですが、とりわけ龍には感心しました(80代女性)。

○郷土高校生の方々による発表会を見せて頂き、感動しました。激動の現今社会にこのような美しい芸能、今後も大いに努めてほしいです。高校生の皆さんのご発展を心から祈念します。全部優秀(89歳男性)。

○大変良かった。忙しい時間をさいて来たかいがあった(40代男性)。

○大人顔負けのすごい演技ができるものだとすごく感動しました(40代女性)。

○高校生が日本の心を必死になって残そうとし ている姿を見て感動した(50代男性)。

○いっしょうけんめいなのがすごくよかった(50代女性)。

○高校生とは思えないです。素晴らしかったです。鳥肌が立つってこのことですね。このよ うな発表会があったことを嬉しく思います(20代女性)。

○生徒の取り組みに心ひかれ涙がでました。今後の活躍を祈ります(70代女性)。

○大変上手で、どの芸もプロのようでした。感心いたしました。(中略)特に岸壁の母には涙が出て我がことのように情がうつって泣かされました。また何べんでも見に行きたいです。 有り難うございました(70代女性)。

2.第22回全国高校総合文化祭郷土芸能部門

1)実施概要 

月 日 平成10年8月8日・9日

会 場 鳥取県 米子コンベンションセンター出場校 48校

受賞校

最優秀 日本航空高校(山梨)和太鼓

優 秀 三原高校(兵庫)人形浄瑠璃

同  牛深高校(熊本)牛深ハイヤ節

日野産業高校(鳥取) 神楽

 (三原高校は国立劇場での優秀校東京公演に出場)

2)全国総文に参加しての感想

全国高校総合文化祭に参加して

市立神戸西高校和太鼓部顧問 松村公彦

 本校和太鼓部は、創部5年と歴史も浅く、この度初めて全国大会に出場させて頂きました。

 出場して驚いたことは、郷土の伝統を守っていこうとする高校生の多さでした。何かと新しい情報が多く、使い捨てが当たり前のこの時代に一生懸命に演じている姿に感心しました。また、非常に高いレベルの演技をされる学校も多く、その演じている人たちは舞台上では高校生としてではなく、芸人として立っているのだと感じさせられました。

 さて、私達のチームスタイルは創作和太鼓であり、曲の構成や打ち方などほぼ全ての面で自分達で作り上げていくのである。そのスタイルがプラスと評価されるか、マイナスと評価されるかが心配されるところであった。
 もともと参加することに意義があり、評価の事を気にすることはおかしいのかも知れないが、正直なところ大変気になっていた。結果、演技の内容の割には評価をしてもらえなかったというのが正直なところであった。

 プロの太鼓打ちでさえ創作スタイルで活躍する人が多い中で、高校生の太鼓チームに何を求めているのであろうか。伝統の芸能がこれといって見当たらない地方のチームや個人にとっては創作以外には無いのである。

 そもそも種類の違った伝統に順位をつけることは無理があると思うが、評価するのであれば、公表するべきであると私は考える。

全国高校総合文化祭の思い出

市立神戸西高校 2年 小野世吾

 去年の夏、全国高校総合文化祭に参加できたことは、僕達部員にとって素晴らしい経験でした。
 参加48校中、和太鼓での出演が25校もあり、和太鼓部の全国的な広がりと勢いを肌で感じてきました。また、大人数のチームばかりの中、9名で演奏するのは少々不安でしたが、先生や保護者の方々の励ましの言葉を力に、どこにも負けない演奏ができたのは大きな収穫でした。全員が心と力を合わせ、一つになって演奏することの素晴らしさを再確認した大舞台だったと言えます。賞こそ逸しましたが、反響は大きく、聴く人全ての心を揺さぶり感動を与えることを目標にしている僕達にとって、団結力を深め今後の努力を誓えることのできた意義深い大会でした。
 出場させていただいたこと、応援して下さった方々、そして何より熱心に指導して下さる松村先生に対して感謝の気持ちでいっぱいです。

全国総文、国立劇場公演に参加して

兵庫県立三原高校 郷土部顧問 大嶋ルリ子

 本校郷土部は昭和27年に創部されて以来、淡路の伝統芸能である人形浄瑠璃を伝承しており、年間約20回の公演を行っています。人形・語り・三味線ともに充実している今年、第22回全国高等学校総合文化祭に3年ぶりに出場することができました。平成10年8月8・9日に米子市で行われた郷土芸能部門発表会は48校が参加した過去最大規模の大会で、そのレベルの高さに驚きました。今回演じた「三十三間堂棟由来」は、35分の外題を制限時間の15分に短縮したもので、内容が十分に伝わるか不安もありましたが、審査員の先生方からは高い評価をいただき、幸い優秀校に選ばれ、5年ぶりに国立劇場への切符を手にすることができました。
 優秀校東京公演は、郷土芸能・日本音楽・演劇の3部門からなり、平成10年8月29日・30日の2日間行われました。この公演への一般の方の関心は高く、1616席は満席でした。本校の出番は初日で、生徒達は大舞台に臆することなく、日頃の練習の成果を発揮し、最高の演技を見せてくれました。
 郷土部がこのような栄誉をいただけたのも師匠さんの熱心なご指導と地域の方々のご支援の賜と心から感謝しています。これに満足せず、さらに芸に磨きをかけ、多くの方々に喜んでいただけるよう努力していきたいと思います。

国立劇場公演の思い出

兵庫県立三原高校 3年 長尾千夏

 平成10年8月9日。5年ぶり2度目の国立劇場での公演が決まったのはこの日でした。
 翌日からの練習は予想以上に苦しく、十分に通し稽古もできないまま本番を迎えました。
 私達の出番は初日でした。出番前に下手で準備している部員や先生方を見て、鳥肌が立ちました。空気が一つになっているのを感じました。「絶対に成功する。」「私達ならできる。」皆の心から不安は消え去っていました。25分間は、あっという間に過ぎました。緞帳が下りる時、一緒に頑張ってきた友達の顔が思い浮かび、涙が出そうになりました。やり切ったという満足感でいっぱいでした。
 最後になりましたが、これまで熱心にご指導くださった師匠さん、諸先生方、地域の方々や、当日応援に駆けつけて下さったOBの方々に深く感謝し、私たちの郷土芸能が、今後もずっと受け継がれていくことを心から願っています。