心の教育総合センター

自殺予防に生かせる教育プログラム 
はじめに
 内閣府のデータによると、日本の自殺者の年間総数は、1998年以来3万人を越える状況が続いていましたが、2006年6月の自殺対策基本法の成立後、2009年以降は毎年減少を続け、2015年中の総数は2.5万人以下となっています。しかし、全体が減少傾向にあるのに対して、児童生徒の自殺者数は増加傾向にあり、予防対策が喫緊の課題となっています。
 自殺対策基本法の成立を受けて、文部科学省でも2006年8月に「児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する検討会」を設置し、学校における自殺予防に対する取組や、自殺が起きてしまったときの緊急対応の在り方などをまとめ、全国に発信しています。更に2016年には自殺対策基本法の一部改正が行われ、学校における自殺予防に係る教育の推進が求められています。
 児童生徒に対する「自殺予防教育」の大きな柱は、「早期の問題認識(心の健康)」と「援助希求的態度の育成」です。消えてしまいたいと思うほどの辛い気持ちに、自分自身で早く気付いて自ら「助けて」と声を発せられること、周りの人が早く気付いて適切な相談や支援を行えること、信頼できる大人や専門機関につなげられることが重要だと言えます。ただ、「自殺」を直接的に扱う授業は、内容を適切に受け止められる基盤が実施対象となる児童生徒に育まれていなければ意味を持ちません。そこで、文部科学省は自殺予防に焦点化した「自殺予防教育の核となる授業」の実施前に、「心身の健康を育む教育」「温かい人間関係を築く教育」など、基盤となる「自殺予防教育につながる下地づくりの授業」の実施を求めています。
 本プログラムは、「自殺予防教育」に焦点化した「下地づくりの授業」に活用できる授業案です。中学校用、高等学校用を作成し、それぞれ3STEPの授業で構成されています。「早期の問題認識(心の健康)」と「援助希求的態度の育成」をねらいの柱とし、最終のSTEP3では自殺の心理等に関わる専門的な内容にも触れています。主に「自殺予防教育の下地づくりの授業」としての活用を考えていますが、「自殺予防教育の核となる授業」の一環としての実施も可能なものになっています。是非、学校で幅広く活用してください。
 ただし、本プログラムは「下地づくりの授業」が中心ではありますが、「自殺予防教育」に直結した内容であるため、慎重に取り組むことが求められます。このことを十分に理解した上で、本プログラムについて解説している第1章を熟読し、組織的・計画的に取り組むとともに、留意事項に十分配慮し、適切に活用するようにしてください。
 実施に当たってクリアーしなければならない課題もありますが、本プログラムが多くの学校で活用され、学校における「自殺予防教育」の普及に寄与できることを願っています。
平成29年3月
自殺予防に生かせる教育プログラム作成委員長
兵庫教育大学大学院教授 新井 肇
 
プログラムの内容
第1章  「自殺予防に生かせる教育プログラム」について
第2章  授業案(各STEPの詳細な内容は、第1章の末尾にリンクがあります
中学校編 【STEP1】ストレスとコーピング(対処)を知ろう
【STEP2】こころのSOSを発信しよう
【STEP3】こころが苦しくなった時の対応を知ろう
高等学校編 【STEP1】知っておこう 青年期のこころとからだ
【STEP2】上手な聴き方を身につけよう
【STEP3】こころの病と出会ったら
付 録  
「評価アンケート(心の健康に関するアンケート)」
● 本プログラムの作成について
 ・「自殺予防に生かせる教育プログラム作成委員会」設置要綱
 ・論文「自他の命を大切にする心を育む教育支援に向けて-自殺予防に生かせる教育プログラムの作成-」