第1回県立高等学校長期構想検討委員会発言要旨
 
1 日 時  平成18年8月10日(木)10:00〜12:00
 
2 場 所  兵庫県民会館「鶴」
 
3 出席者  別紙
 
4 会議の概要
(1)委員長、副委員長選出
   梶田委員を委員長に、桂委員を副委員長に選出
(2)会議の公開の是非について
(3)「県立高等学校教育改革第一次実施計画」の推進状況等に関する資料説明
(4)協 議
  @ 「県立高等学校教育改革第一次実施計画」の評価・検証について
  A 「県立高等学校教育改革第二次実施計画」(仮称)の策定に向けて
 
5 発言要旨

委 員    
・ この検討委員会は、まず第一次実施計画の評価・検証を行い、それを踏まえて平成21年度以降の高等学校教育のあり方を検討する委員会である。この委員会においては、我々委員による自由な立場での率直な意見の交換や、公平・公正な協議を確保するためには、会議そのものは非公開にしてはどうか。会議資料についても、委員会としての意見をまとめていく際の途中の資料となるため、まとめていく段階においては非公開にしてはどうか。
 
・ しかしながら、この委員会ではどのような議論がなされたかということについて、県民に広く知らせる必要があるため、事務局で委員会での発言内容の要旨を委員名を伏せた形で整理してもらって、次回の会議で委員の皆さんに承諾を得た上で、公開するということにしてはどうか。

各委員
・ 異議なし。

委 員
・ 「第一次実施計画」では、「個性化」「多様化」「興味・関心」など自由度が多く取り入れられている。それが決して悪いというわけではないが、興味・関心に応じて学校を選んでいるのだから、そうした学校の校長や生徒に対するアンケート調査でいい結果が出るのは当然だろう。アンケート結果が良ければ改革は成功したと判断していいのか。全国で教育改革が進んでいるのに、例えばニートやフリーターが増えているという面をみると、教育改革の成果があったと言えるのかどうか、今の段階ではわからないのではないか。

事務局
・ 今兵庫県で進めている高校教育改革は、生徒が主体的に学びたいことが学べる学校を選び、将来に向かって意欲的に学べるような学校とすることを目的として進めている。現在はまだその途上ではあるが、学校で学ぶという側面からみれば、概ね我々が求めていた結果になっていると考えている。
・ 生徒が学ぶ中で、どのようにして職業観、勤労観を育んでいくのかということについては、総合学科等では取り組んでいることを踏まえながら、今後も工夫していく必要があると考えている。

委 員
・ 教育改革の評価をどの観点で行うかという議論については、教育改革国民会議でもあった。その際、OECDの学習時間や読書量等の国際比較等の資料をもとに、議論がされたこともある。いわゆる「ゆとり教育」の評価についても、国レベルで論議がなされている。
・ 今回のアンケートでは、直接の関係者である生徒や保護者、学校が、改革の結果を前向きにとらえていることが読みとれることが重要である。

委 員
・ 評価にはいろんな方法がある。今回は第一次実施計画について、ある段階で目的に照らしてどうだったかという評価をしようとしているものだと思う。アンケートの項目は、生徒が高等学校に入学して学びたいことが学べる目的が達成されているかという観点から評価しようというものである。そうした観点からアンケート等の結果を見ると、一定レベルの評価を得ていると言えるだろう。
・ 最初に委員が指摘されたのは、もう少し長いスパンで、例えば生徒が高校を卒業して大学へ進学したり、社会に出た時になって、「あの高校で学んで良かった」と評価する視点も必要なのではないかということだと思う。高大連携やインターンシップが実施されるようになった背景には、大学に入って何をするのか分からない、社会に出てから何をするのかわからないという子どもたちへの対応から始められたものだと理解している。例えば、70年という人生を経て、振り返ってみて良かったといえる制度が本来良い制度だと思うが、こうした極めて長いスパンにおける視点での評価をどう入れるのかを考える必要もあるだろう。

委 員
・ もともと「第一次実施計画」が策定された背景には、少子化・生徒の多様化・国際化・情報化等の社会の変化、不登校・不本意入学の増加、生涯学習社会の進展等にどう対応するかといった課題があったと思う。そういう中でこれまで導入されたり実施されたりしてきたのが、総合学科、単位制等の新しいタイプの学校や特色ある専門学科の設置、少子化の中で生徒数を確保する発展的統合等であったと思う。
・ 現時点での進捗状況を見てみると、新しいタイプの学校はほぼ各学区にバランス良く配置され、発展的統合により学校の適正規模も確保されている。新しい選抜制度についても、概ねその趣旨が理解されているという結果になっている。こうしたことから、全体としては「第一次実施計画」はうまくいっていると思う。
・ ニートの問題への対応の一つとして、高校教育の場において進路に対するガイダンスや相談体制について、もっと工夫していかなければいけないと思う。

委 員
・ 「第一次実施計画」の策定以前には、不本意入学の実態が多くあった。このことは、少なからず不登校や中途退学につながり、さらにニートの問題とも絡んでいると考えている。こうした問題を改善するために「第一次実施計画」が策定されたと理解している。
・ 子どもたちが学びたいことが学べるような学校選択ができることは最も大切であると思う。複数志願選抜も、生徒が希望に添って学校を選択することに意味がある。偏差値だけで高校を割り振ることは、不本意入学による中途退学や不登校につながり、ひいてはニートが生まれる。「第一次実施計画」は、このような状況を克服することを目指していると考えている。そうする努力をすることで、公立高校がスポーツなど部活動の面でも、学力の面でも頑張れるバランスのとれた学校となっていく改革となるのだと思う。  
・ ニートの問題については、政府もようやく若者支援に立ち上がっている。本県の高校教育改革でも、「第一次実施計画」の経験を生かして、さらに追跡調査も行いながら、若者支援の視点も入れて「第二次実施計画」を考えていくべきだろう。
・ 県立高校の中には、不登校をなくすために大変な努力をしている学校もある。そうした学校の成果を県全体にどう生かしていくかを考えることが必要である。

委 員
・ 不登校やニートの解決策の一つとして、生徒の個性化や多様化に対応した新しいタイプの学校を作ることはいいと思う。
・ 一方で、自由化といいながら、子どもを甘えさせる方向ばかりでは良くないと思う。道徳的なことや、社会人として何が大切なのかといったことを、強制的に教え込むことも必要ではないか。そのバランスが大切であると思う。

委 員 
・ もともと高校進学率は3割や4割であったものが、いつの間にか9割をこえるようになって、高校を構造的に変えていく必要が出てきた。そうした中で、兵庫県では先導的に、生徒の進路や興味・関心に応じた多様な選択肢を用意してきた。これが「第一次実施計画」ではないか。
・ 高校進学率が90数%で定着している中で、次の段階は何をするのがよいのかということを、「第二次実施計画」では考えていく必要があると思う。

委 員
・ 総合学科では、生徒が幅広く選択できるよう多様な選択科目を用意しているが、選択希望者が少ないと、教員の人数や施設等の問題から開講できない講座もある。生徒数が減り、学級数も減ると、学校として選択科目を十分用意できないため、選択幅が狭まり、生徒にとって魅力が少なくなってしまうのではないだろうか。
・ 姫路・福崎学区では複数志願選抜が導入されたが、交通網の発達している学区のように、どの高校でも通学可能なわけではない。そのため、第1・第2志望校以外の学校を希望しない生徒が他学区より多いと聞いた。新しい選抜制度を導入していく際には、そうした地域性も考慮する必要がある。

委 員
・ 少子化の中で学校の規模も縮小しているが、総合学科はある程度以上の規模が確保されないと機能しないのではないか。

委 員
・ 定時制高校の充足率が上がっているのには、どんな理由が考えられるか。

事務局
・ 1つの理由としては、平成13年から多部制高校を設置する際にいくつかの定時制高校を募集停止し、新しい学びを用意したことがあると思う。2つ目には、定時制高校へのニーズが高まったことがあると思う。働きながら学ぶ生徒以外にも、全日制高校のように朝から夕方までの時間帯では学びにくいが定時制高校のように4時間という時間帯の学校では学べるという生徒も増えていると考えている。

委 員
・ 定時制高校の生徒の中で、実際に就職しているのはどのぐらいの割合か教えて欲しい。

委 員
・ 今年7月の調査では、正社員・パート・アルバイト・自営手伝いも含めて、1年生で56%、2年生で65%となっている。3・4年生のデータはないが、本校では3年生で70%を超え、4年生では90%を超えている。

事務局
・ 平成16年度の調査によると、定時制高校と通信制高校を合わせて、定職に就いているものが約11%、アルバイトとパートは合わせると約52%である。

委 員
・ 就職していない生徒は、授業がない時間は何をしているのか。

委 員
・ 家事手伝いの生徒や、進学を目指して勉強している生徒などがいる。

委 員
・ 中卒で働くのが当たり前であった時の定時制高校と、今の定時制高校では状況がかなり違っている。
・ この委員会は公立高校のあり方を検討する会だが、兵庫県全体で考えれば私学との役割分担の中で、県民の子どもをうまく育てていかなくてはならないと思う。

委 員
・ 複数志願選抜における第2志望校やその他校は、行きたい学校というより、行ける学校だと生徒が思い、余計に甘えさせてしまうことになるのではないかと思ってしまう。

委 員
・ 現在の公立高校と私立高校の生徒の割合は、概ねどのぐらいか。

委 員
・ 全日制で見ると、中学校から進学している生徒を含めて、現在は公立が約74%、私立が約26%程度である。

委 員
・ 「第一次実施計画」を策定する時には、不本意入学を少なくすることが課題の一つであった。その課題を解決するために、複数志願選抜が考えられたと思う。
・ 今回の議論は公立高校をどうするかということだが、私立高校にしわ寄せがいくことになるとよくない。公立と私立を併願する生徒も多い中、議論のベースとしては、公立・私立という設置者をこえた兵庫県の高校全体について共通認識を持った上で、公立高校のあり方を考えていく方がうまくいくのではないか。
・ 定時制で18才をこえた生徒の割合はどうか。定時制や通信制では、18才をこえた生徒がかなり在籍している状況があるのではないかと思うが。

事務局
・ 平成16年度の数字でいうと、定時制高校と通信制高校を合わせると、18才〜20才が約34%、21歳以上が約11%である。

委 員
・ 定時制高校や通信制高校は、生涯学習の一つの役割を果たしている。このことも念頭において議論する必要がある。

委 員
・ 総合学科では、生徒の進路に応じて選択しやすいよう系列を置いている。総合学科では普通科とカリキュラムが違うため、大学入試用の模試に限っていうと、必ずしも良い結果が出にくい。高校時代の取り組みを活かしてAO入試や推薦入試で進学する生徒もいるが、それは一部の生徒であり、大部分の生徒にとっては、大学の一般入試のハードルは依然として高い。総合学科としてのカリキュラムの自由度を保ちつつ、どうやって生徒に進路に応じた学力をつけるのかが課題だと考えている。

委 員
・ 小・中学校の保護者の高校教育改革についての関心は高く、PTAが主催して入学者選抜制度について県教委から講師として招き、勉強会を開いていると聞いている。大学や社会へのハードルが高いことから、小学校や中学校でも学力をつけるために頑張って欲しいという声を平素から聞いている。

委 員
・ 単独選抜の学区では、進路希望調査の結果をみると、中学3年生の6月と入試が近づいた時では、希望の高校が変わってくる。それは、どうしても受験校の選択は中学校での成績に左右されるからである。そうした状況を変えるためには、単独選抜よりも総合選抜や複数志願選抜の方がいいといった話がよく出る。
・ 年によって定時制高校が3月の学力検査で充足して、全日制高校に不合格となった生徒が4月の再募集で志願できないことがあった。保護者の中には、3月の段階の定員が一杯になるのなら、子どもに最初から全日制高校を受けさせずに、定時制高校を受けさせるという状況も出てきている。
・ 軽度発達障害の子どもの進路についても大切だと考えている。こうした子どもは定時制高校を受験する場合が多いため、それに対応できる学力を何とかつけてやりたいと努力している。

委 員
・ 学びたいことが学べる学校づくりが高校で進められていることを、中学校側としては大変歓迎している。
・ 一方で、中学校側では、子どもたちが何を学びたいのかという意志決定をする力をつけることが求められるようになっているが、現実にはまだ十分に取り組めていない現状がある。高校教育改革が進められる中で、中学校でもキャリア教育の視点に立って、生徒に自分が将来本当は何を学びたいのかという目的意識を持たせる指導が必要であると感じている。

委 員
・ ニートやフリーターの問題はよく取り上げられている。3月に、ある新聞が日本・アメリカ・中国・韓国の高校生の意識調査の比較を掲載していた。それによると、「現在大事にしていること」として「希望の大学に入ること」を挙げたのは、中国や韓国では約70数%、アメリカでも50%以上あるのに対して、日本は約30%しかない。また、「日常生活で非常に関心があること」として日本では「大衆文化(マンガ、雑誌、ドラマ、映画、音楽等)」を挙げた者が60%を超えるのに対して、アメリカ、中国、韓国では「将来の進路」が60%を超える。また、日本の高校生は4人に1人が「食べていける収入があればのんびり暮らしたい」と考えているというデータも掲載されていた。
・ 戦後61年がたち、物の豊かさでは日本はトップクラスだと思う。これは、戦後経済界が頑張ったことと、日本人は明治以来学校教育をきちっとされてきたということがあると思う。今の子どもは豊かさの中にあるが、これが今後日本で何十年も続くとは思わない。高校でも、小学校でも、中学校でも、家族ぐるみで子どもの進路の問題を考えていく必要があるのではないか。また、周囲の先生方と相談しやすい雰囲気作りも必要だと思う。ニートやフリーターは、日本の豊かさの中で生まれてきているのではないかと思う。つまり、今の日本は働かなくても子どもは小遣いをもらえるという社会であり、そうしている親にも甘さがあるのではないだろうか。今後は、教育改革を考える際、子どもと親との関係も視野に入れて考えていく必要があると思う。ニート、フリーターの問題は、学校でもいろいろと努力してもらっているが、更によい方向に向かっていけばよいと思っている。

委 員
・ 今日の議論を振り返ると、高校教育のあり方を考える上で2つの観点が提示されたと思う。一つは、生徒や保護者にどうしたら満足してもらえる高校教育を提供できるか、また、生徒が入学して挫折感を味わわずに高校生活を送らせることができるのかという観点、もう一つは、高校が安易なものになってはいけないという観点である。教育なので、人間的な成長をどう図るかが大切である。同時に、学校は勉強する場であり、広い意味での学力をつけなければならない場である。単位制でも、通信制でもシステムとしては良いが、それで本当にいわゆる学力をつけることができるのかと問われることがある。生徒や保護者の満足度を上げると同時に、いわゆる確かな学力をつけることをどう両立させるかということが、新しい時代の高校教育には求められていると思う。
  
(別 紙)

 

  氏 名

       所 属 ・ 職 名

 出  席

委 員 長

梶田 叡一

兵庫教育大学長

    ○

副委員長

桂  正孝

宝塚造形芸術大学教授

    ○

委  員

天野 明弘

兵庫県立大学副学長

   ○

委  員

長瀬 荘一

神戸女子短期大学副学長

   欠

委  員

渡邊三枝子

筑波大学特任教授

   欠

委  員

小田  毅

県議会文教常任委員会委員長

   ○

委  員

池田 志朗

県経営者協会会長(川崎重工業顧問)

   ○

委  員

田治米政美

日本労働組合総連合会兵庫県連合会会長代理

   ○

委  員

糸野 清明

神戸新聞論説委員

   ○

委  員

西門 義博

県私立中学高等学校連合会理事長(三田学園理事長)

   ○

委  員
 

小川 雄三
 

都市教育長協議会長(神戸市教育長)
 

代理出席
(池内神戸市教委指導部長)

委  員

圓尾 哲一

町村教育長会長(太子町教育長)

   ○

委  員

松下 敬幸

県立高等学校PTA連合会長(県立長田高校PTA会長)

   ○

委  員

内藤美佐子

県PTA協議会理事(西宮市PTA協議会長)

   欠

委  員

藤井  修

県立高等学校長協会長(県立長田高校長)

   ○

委  員

伊藤 正幸

市立高等学校長会長(神戸市立兵庫商業高校長)

   ○

委  員

岸本 芳信

県立高等学校長協会工業部会長(県立兵庫工業高校長)

   ○

委  員

稲垣  明

県立高等学校長協会定通部会長(県立神崎工業高校長)

   ○

委  員
 

岸野 建陽
 

県中学校長会長(神戸市立横尾中学校長)
 

代理出席
(平岡西宮市立大社中学校長)

委  員

江原 礼子

県小学校長会代表(伊丹市立緑丘小学校長)

   ○

委  員

田中 章愛

県立香寺高校教諭

   ○

委  員
 

塚田 良子
 

三田市立ゆりのき台中学校教諭
 

   ○
 
 
事務局  吉本知之(教育長)、岡野幸弘(教育次長)、平井敬員(高校教育課長)、吉田耕造(高校教育課主幹)、中野憲二(高校教育課高校教育改革係長)、指導主事