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第68回卒業証書授与式校長式辞

                                                    

  厳しい寒さの中にも、春の息吹が感じられる今日の佳き日に、ご来賓及び多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、兵庫県立神戸工業高等学校第68回卒業証書授与式を挙行できますことは、誠に大きな喜びでございます。高いところからではございますが、ご臨席賜りました皆様に厚くお礼申し上げます。

 まずは、ただいま卒業証書を授与しました66名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、本校における全課程を修了し、本日晴れの卒業証書を手にすることとなりました。心からお祝い申し上げます。
 また、この日までお子さま方の勉学を支え、励ましてこられた保護者の皆様、お子さま方のご卒業おめでとうございます。こうして卒業式を迎えることができましたのは、保護者の皆様のご理解とご協力の賜物と、深く感謝申し上げます。

 さて、卒業にあたり卒業生の皆さんに、私から3点話をしたいと思います。
 まず1点目は、「自分への自信と、周りへの感謝の気持ちを持ってほしい」ということです。
 皆さんが本校に入学してから、こうして卒業を迎えるまでには、多くの困難があったと思います。皆さんのほとんどは、昼間は仕事をして、その後本校で
勉強しました。仕事と両立しながら学校に通い続けることは、口で言うほど簡単なものではなかったでしょう。途中で挫折する仲間も見てきたと思います。でも、そうした中、皆さんはこうして卒業まで頑張り抜きました。高校入学前も入学後も、自分に自信が持てなかった人もいるかもしれません。でも、今はあきらめずに卒業まで努力した自分に、胸を張って、自信を持って下さい。
 同時に忘れてはいけないのは、皆さんの周りの人たちのことです。皆さんがこうして卒業できるようになるまで、家族や友達、先輩、後輩、先生、職場の上司や同僚など、様々な人が、皆さんを支え、励まし、応援してくれたはずです。改めて、そうした人たちへの感謝の気持ちを思い起こして下さい。

 2点目は、「生涯にわたり幅広く学び続けてほしい」ということです。
 これから皆さんを待ち受ける日本の社会は、必ずしも明るい未来だとは言えません。温暖化や異常気象に代表される地球環境の問題、出生者数より死亡者数の方が多くなることによる人口減少の問題、超高齢社会と言われる中での社会保障の問題、これらの課題のほとんどは、解決への道筋は1つではなく複合的な問題ばかりです。
 また、10年後から20年後には、今、日本で働いている人の約50%の職業が、機械や人工知能によって代替することが可能になると言われています。例えば、スーパーのレジは、すでに従業員がレジを打つ必要がない「セルフレジ」があります。また、製造業の現場では、人間並みの作業が出来るロボットの導入が進められています。銀行の窓口業務も、将来機械が行う可能性が高いとされています。日本人の働き方も今後大きく変わっていくでしょう。
 皆さんは、本校で工業教育を学びましたが、これからは一つの分野の知識だけで通用する時代ではありません。変化の激しい社会で生きていくためにも、生涯にわたり勉強し、幅広い知識を身につけて欲しいと思います。

 3点目、これが一番言いたいことですが、「人と対面してのコミュニケーションを大切にしてほしい」ということです。
 ITの目覚ましい発達により、世の中は大きく変わりました。様々な情報を、インターネットを通して得ることも、発信することもできます。皆さんも、友達や家族との連絡はメールで行うことが多いと思いますが、最近では、電車の中で隣に座っている人と、顔を合わせず、スマートフォンのラインで会話しているといったことも聞きます。
 昨年12月に、本校の「グローバル語り部講演会」として、トレンドマイクロ株式会社の大場章弘氏の講演会を開催しました。アメリカのシアトルでの勤務経験もあり、IT業界の最前線で活躍されている大場氏が、講演の中で、「いくらITが進化しても、仕事は一人ではできない。最後は人と人の信頼関係だ。そのためにも、日頃からお互い目を見てしっかりコミュニケーションをとることが大切だ」と話されました。私もそう思います。皆さんには、ITが進化する社会だからこそ、人と対面してのコミュニケーションが大切だと思います。

 最後に、卒業生の皆さんが、神戸工業高校生であったことを誇りとして、それぞれの目標に向かってこれからも努力し、幸せな人生を歩んでいかれることを祈念して、式辞とします。皆さんのことを心から応援しています。

 平成28年2月25日

                       兵庫県立神戸工業高等学校

                        校 長  中谷 安宏