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第67回卒業証書授与式校長式辞

                                                    

  厳しい寒さの中にも、やわらかな春の日差しが感じられるようになりました今日の佳き日に、ご来賓の皆様と多数の保護者の皆様のご臨席を賜り、兵庫県立神戸工業高等学校第67回卒業証書授与式を挙行できますことは、誠に大きな喜びでございます。高いところからではございますが、ご臨席賜りました皆様に厚くお礼申し上げます。

 まずは、ただいま卒業証書を授与しました50名の皆さん、卒業おめでとう。皆さんは、本校における全課程を修了し、本日晴れの卒業証書を手にすることとなりました。教職員を代表して心からお祝い申し上げます。

 また、この日までお子さま方の勉学を支え、励ましてこられた保護者の皆様、お子さま方のご卒業おめでとうございます。こうして卒業式を迎えることができましたのは、保護者の皆様のご理解とご協力の賜物と、深く感謝申し上げます。

 さて、卒業生の皆さん、本校に入学してからこうして卒業を迎えるまでには、多くの困難があったと思います。途中で卒業をあきらめそうになった人も、人には言えない苦労をしてきた人もいるでしょう。皆さんのほとんどは、昼間は仕事をし、その後本校に通いました。仕事と学校の両立は、本当に大変だったと思います。そうした中、本日を迎えることができたのは、もちろん皆さんの努力の結果です。しかし、皆さんの周りには、いつも皆さんを支え、応援してくれた家族や友達、先輩、後輩、先生、職場の上司や同僚など様々な方がいたはずです。そうした人たちに感謝をして、是非その気持ちを皆さんの口から伝えて欲しいと思います。 

 私は、皆さんとはわずか1年間のつきあいで、皆さんと直接話をする機会はそんなに多くありませんでした。しかし、皆さんに伝えたいことは、始業式や終業式等の機会に話をしてきました。その時の話と少し重なりますが、卒業にあたり3点話をしたいと思います。

 1点目は、自分の目の前のことに、「本気で取り組む」人になって欲しいということです。私は、1学期の始業式に、相田みつをさんの「本気」という詩を紹介して、「どんなことでもいいので『本気でやった』と言えるようになって欲しい」という話をしました。皆さん、本校で過ごす中で、何に本気になれましたか。専門科の授業や実習・課題研究・学校行事・資格取得・部活動・仕事・就職や進学の試験など、本気になれたものは人によって違うかもしれません。しかし、何かに本気になれた人は、その結果が必ずしも素晴らしいものでなかったとしても、ものづくりの楽しさがわかったり、努力した後の充実感や心地よい疲れを感じたりしたことでしょう。

 皆さんの長い人生の中では、これからもいろいろな苦難が待ち構えているかもしれません。そんな時、つらいことから逃げるか、正面からぶつかるか。是非、逃げずに「本気で」頑張る人になってください。そうすれば、自分が納得できる結果がきっとついてくると思います。

 2点目は、かけがえのない大切な存在である「自分」を大切にして欲しいということです。このことは、2学期の始業式に、金子みすずさんの詩の中にある「みんな違ってみんないい」という言葉を紹介して話をしました。誰でも得意なことと不得意なことがあります。でも、それは当たり前のことです。自分には自分のよさがあり、「みんな違ってみんないい」のです。だから、自分は一人しかいない「かけがえのない存在」なのです。

 また、2学期の終業式でも、「皆さんの名前は、お父さんやお母さんが、かけがえのない大切な存在である皆さんに『こんな人生を送って欲しい』という思いをもってつけたものだ」という話をしました。皆さんがかけがえのない大切な存在であるということは、皆さんの周りの人もそれぞれ大切な存在であるということです。自分を大切にするということは、自分の周りの人も大切にするということでもあるのです。

 しかしながら、この1年間には、長崎県佐世保市で高校の同級生を殺害したり、神戸市長田区で小学校1年生の児童が近くに住む男性に殺害されたりといった痛ましい事件が何件か起こりました。本当に悲しいことです。皆さん、是非自分を、自分の周りの人を、自分や周りの人の命を大切にして下さい。

 3点目は、皆さんへのお願いではなく、旅立ちにあたってある曲の詩を紹介します。皆さん、「いきものがかり」というグループの曲に「YELL(エール)」という曲があるのを知っていますか。平成21年度のNHK全国学校音楽コンクールの中学校合唱の課題曲となった曲ですので、もしかしたら中学校の卒業式で歌ったことがあるかもしれません。私はこの曲の詩は本当に素晴らしいと思います。今日は、特に気に入っている1節を紹介します。

「サヨナラは悲しい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐYELL(エール) 共に過ごした日々を胸に抱いて 飛び立つよ独り(ひとり)で未来(つぎ)の空へ」

 「サヨナラ」という言葉は、別れの言葉ではなく、ここ神戸工業高校で共に過ごした日々を糧に、皆さんが新しい世界に飛び立つことを応援する言葉です。そんな思いを込めて、皆さんに挨拶をして式辞の最後の言葉にしたいと思います。皆さん「サヨナラ」。これからも皆さんの新しい世界での活躍を、心から応援しています。

 

 平成27年2月25日

                       兵庫県立神戸工業高等学校

                        校 長  中谷 安宏