第4章  スクールカウンセラー活用マニュアル
                  スクールカウンセラー活用のために


                兵庫県立教育研修所 心の教育総合センター
                 (Tel.0795-42-6556)




はじめに

 スクールカウンセラーの有効な活用に向けて調査研究を基盤に情報を発信しています。また、学校現場の情報がありましたら、本センターにご連絡いただければ幸いです。スクールカウンセラーには、さまざまな持ち味がありますので、このパンフレットは参考程度に活用してください。

 「文部省スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」は、平成7年度の全国141校(兵庫県13校)から、平成10年度は全国16661校(兵庫県111校)、平成11年度は全国2016校(兵庫県138校)と拡大しています。

[事業内容]
1 スクールカウンセラーの職務内容
 スクールカウンセラーは、校長等の指揮監督の下に、概ね以下の職務を行う。
 @ 児童生徒へのカウンセリング
 A カウンセリング等に関する教職員及び保護者に対する助言・援助
 B 児童生徒のカウンセリング等に関する情報収集・提供
 C その他の児童生徒のカウンセリング等に関し各学校において適当と認められるもの
2 調査研究内容
 調査研究校においては、各学校の実情等に応じて、以下の点について、スクールカウンセラーの活用、効果等に係る実践的な調査研究を行う。
 @ 児童生徒のいじめや暴力行為等の問題行動、不登校や高等学校中途退学等の学校不適応その他生徒指導上の諸課題に対する取り組みの在り方
 A 児童生徒の問題行動等を未然に防止し、その健全な育成を図るための活動の在り方
3 調査研究校における適切な位置付け
 調査研究校においては、スクールカウンセラーを生徒指導に関する校内組織等に適切に位置付けるよう工夫し、その効果的な活用を図るものとする。
         (「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業実施要領」から抜粋)



学校へのお願い

相談室の設備や備品は?

 リラックスできる環境を!心のオアシスとして、リラックスできるソファー、ねそべることができる絨毯や畳が好評です。心がほっとする絵や花や観葉植物もいいですね。心が落ち着く音楽を流すのもいいかもしれません。もちろん、冷暖房設備もある方がいいですね。
 相談室の場所は、保健室の近くとか、子どもが行きやすい部屋だといいですね。子どもたちがあまり行かない場所に相談室を設置した場合、「あそこに行く子はおかしい子だ!」といった誤った風評のもとになることがあります。
 「だれもが利用でき、リラックスして安心できる部屋で、かつ秘密は守ってもらえる」ということが原則です。相談室という物理的環境を整えることがまず大切です。
 電話もあったほうがいいでしょう。携帯電話を設置している学校もあります
(電話相談というより、面接の予約などに便利です)。
・設備は、畳、絨毯、冷暖房が好評です。
・備品は、箱庭、心を豊かにする本、オセロや将棋などのゲーム、CDやキーボードが好評です。
 (ファミコンをおいているカウンセラーはいません)


先生方へ

スクールカウンセラーが来ていることを知らせてください!

 自分の学校に「スクールカウンセラー」がいることを知らなくては、活用できません。保護者、児童生徒が、スクールカウンセラーの存在を知っていることがまず前提です。
 「心の問題はだれもが抱えることであり、それを解決するためには、ひとりで抱え込まないで、他者の援助を受けることが大切だ」というメッセージを教師が児童生徒に伝える機会になります。
・学年はじめの朝礼などの全校集会でスクールカウンセラーを紹介してください。
・教師は折々にホームルームでスクールカウンセラーの来校を知らせてください。


スクールカウンセラーの皆さんへ

先生方との連携を!(職務内容A)

 スクールカウンセラーは全ての子どもにマンツーマンでかかわることはできません(講演や体験ワークなどで全ての子どもに働きかけることはできますが)。先生方との連携がなくては、子どもへの援助はできません。
 もちろん、子どものカウンセリングをスクールカウンセラーがするのは、当然ですが、守秘義務の大切さを先生方と一緒に考えていくという姿勢が大切です(守秘義務については、学校臨床心理士ワーキンググループによれば、「狭義の守秘義務を全面に出すのではなく、学校全体で守秘義務の大切さを考えていく方向を念頭におくこと」とされている。「学校臨床心理士の活動と展開」12p)。
 相談室に遊びにくる子どもたちの様子や保健室や教室で生活する様子から、スクールカウンセラーなりに「子どもの心の模様と悩み」をさがし、先生方とともに「解決のヒント」をさがしていきます。
・職員室でのチャンス相談(立ち話やちょっとした話)も大きな役割をもっています。職員室にスクールカウンセラーの机があることは、このチャンス相談を増やすことになり ます。
・体験的ワークや事例研究の研修会を企画しましょう!
・スクールカウンセラーとの連携のキーパーソンを置いていただくようお願いしてください。
・校長先生はもちろんのこと、教頭先生、生徒指導担当、教育相談担当、養護教諭などのキーパーソンが活用の鍵をにぎっておられます。
・教育相談部の設置など、有効に活用できるシステムをつくっていただきましょう。

保護者へのアプローチを!(職務内容A)

「カウンセリングはまだまだ敷居が高い!」と思っている保護者がおられます。
子育てには、悩みがあるのが当たり前。一人で解決することも大切ですが、グループで話し合ったり、自分の思いを広げてみると、すっきりすることがあるといった体験をする機会をつくってください。
・保護者は、自分の心の問題を先生には話しづらいこともありです。そんな時、子どもの教育評価とまったくかかわらない第三者を活用されることも有効です。
・何かの行事(学年懇談会など)のときにちょっとだけ時間をもらってスクールカウンセラーが話をするというのも、効果的です。
・保護者向けの研修会を開いていただけるように学校側にお願いしましょう。

児童生徒はどのように相談室に来るの?(職務内容@)

・昼休みや放課後に、数人のグループで相談室を訪れ、その中に、深い問題を抱えている子どもがいることがしばしばあります。
・何か問題が起こったとき、先生が子どもといっしょにカウンセラーと相談室で話し合うことで解決が進むケースもあります。

児童生徒への予防的かかわりを!(研究内容A)

・カウンセラーによっては、給食時に教室にはいったり、授業を見学したり、学校生活のようすから、望ましい援助のあり方のヒントをえている人もいます。
(もちろん、学校側の要請や了解があるというのが、前提です)
・道徳や学活の時間に、「リラクセーション」や「人間関係」や「自分をみつめる」といった体験的な授業を教師といっしょにやっているカウンセラーもいます。
・心の教育総合センターでは、心の教育開発研究委員会を設置して、先生方の「心の授業」のあり方を模索しています。
(報告書「心の教育授業実践研究第1号、第2号」を参考にしてください)

         発行2000.4.1

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