中学生の「社会体験学習」の効果に関する研究
−中学生は「トライやる・ウィーク」で、どう変わったか−

心の教育総合センター
  高校教育研修課 指導主事 小林 宏


要旨

 中学生の社会体験学習による変化(効果)を測定する尺度(質問紙)作りを試みた。その結果、「勤労観」「社会的協調」「家族のきずな」の3因子18項目の質問項目を抽出した。妥当性・信頼性の検討の結果、作成された「中学生用社会体験学習効果測定尺度(以下「本尺度」とする)」は、中学生の社会体験学習の成果を、測定するに十分な尺度であることが確認された。本尺度を用いた本年度「トライやる・ウィーク」体験者の事前・事後得点の分析の結果、「勤労観」、「社会的協調」において、男女ともに有意な得点増加がみられたが、特に女子の得点増加が顕著であった。「家族のきずな」においては、男女差は見られず、共に有意な得点増加が見られた。また、体験学習中に、親(父母など)と体験学習について、よく話し合ったと答えた群ほど、事後における得点の増加が顕著であり、地域と家庭の教育力が合わさることによって、一層中学生の社会体験を豊かにすることが実証された。

キーワード   中学生の社会体験学習   効果測定尺度 トライやる・ウィーク   地域と家庭の教育力

はじめに
  本県においては、平成9年の神戸市須磨区の小学生連続殺傷事件後、河合隼雄氏を座長とする「心の教育緊急会議」を開催し、「現在の子どもたちが置かれている状況をどのようにとらえるか、また、子どもたちの心の成長をどのように図って行くかなど」1)の観点からの検討がなされた。
 報告書は「心の教育の充実にむけて」と題され、その提言の一つとして、「中学校における長期体験学習の導入」1)がある。
 本県教育委員会は、この提言を受け、平成10年度より県下の中学2年生を対象に、一週間の社会体験活動の実施を提唱した。これが「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」(以下「トライやる・ウィーク」とする)」である。
 心の教育総合センターでは、この「トライやる・ウィーク」を体験した中学2年生に対し、継続的な心理学的・数量的な効果の測定を行い、同事業の在り方を検討する材料となることを目指した。

1 中学生の社会体験学習に関する従来の研究
 文部省中央教育審議会2)は、平成10年6月に「新しい時代を拓く心を育てるために−次世代を育てる心を失う危機−」と題した答申を行い、幼児期からの心の教育の重要性を指摘している。中でも、地域の教育力に依拠した体験学習の必要性は、将来の職業観や勤労観の育成をめざそうとするとともに、両親等保護者の「働く姿」に接することによって、親子関係等の在り方を考え直そうとする視点を示唆している。
このような、社会体験学習、とりわけ中学生の長期社会体験学習の取り組みは、いまだ始まったばかりである。
 古田猛志・小林宏3)は、平成10年度から始まった「トライやる・ウィーク」に参加した2780名に対して、心理学的質問紙を体験前・後に実施することによって、体験による変化(効果)を測定した。用いた心理学的質問紙は、桜井茂雄4)の「自己効力感」尺度(11項目)、伊藤美奈子5)の「個人志向性・社会志向性」尺度(17項目)、岡田忠義6)の「高校生用勤労観」尺度(30項目)をもとに小林宏7)によって改訂された「中学生用勤労観短縮版」尺度(16項目)の三つである。
 その結果、三つの心理学的質問紙ともに、体験後において有意に合計得点が増加し、この体験が中学生に望ましい変化(効果)を与えたこと等を指摘している。
 また、小林宏8)は上記古田・小林3)の研究を性差の観点を加えて分析し直し、現在中学生の取り組んでいる体験プログラムが、男子以上に女子に効果的であることなどを指摘している。さらに、古田猛志・住本克彦9)は、小林7)の「中学生用勤労観短縮版」尺度の4下位領域尺度得点の体験事前事後の変化から、進路指導(職業発達・進路成熟)的効果について分析し、文部省10)が 進路指導の概念として用いる「啓発的体験学習」としても「トライやる・ウィーク」体験は効果的であると指摘している。
 ところで、上記古田・小林3)等の研究は、「自己効力感」等、従来他の目的に開発された心理学的質問紙尺度を援用して、体験による変化(効果)を測定する手法が用いられている。しかし、一方で、これらの体験によって、中学生の社会や社会生活への認知がどのように変わったかを構造的に明らかにすることはできなかった。
 したがって、中学生にとっての具体的な「社会認知」である「おとな(特に働いているおとな)の職業的なものの見方や考え方」「大人の社会のルールや規範」「会社や大人の世界の仕組み」「社会生活をする上での家族というものの意味や価値」等が、社会体験学習の事前においてどのような構造を持ち、事後においてどのように変化したかを究明することが必要なのである。
 つまり、これらの「社会認知」は、さまざままなメディアや「教育」によって単に「知識」として「教えられ」内在化されるものではなく、実際の「体験」によって中学生の内面に実感され「育つ」ものであり、その体験過程を経て、それぞれに内在化されるものなのである。また、これらの過程にこそ、社会体験学習の価値があると考えられる。
 しかし、中学生の社会体験による社会認知の構造及び構造の変化を明らかにしたり、社会体験学習の効果を測定する心理学的な尺度は無い。今後一層中学生のさまざまな社会体験学習が実施されることが予想され、中学生にとってより望ましい体験プログラムが検討される必要のあることから、中学生の社会体験学習の効果を測定する簡便な心理学的な尺度の開発が望まれる。

2 本研究の目的
(1)研究T:中学生用「社会体験」効果測定尺度の作成

 上述したように、本稿の目的の第1は、中学生の社会体験学習の効果を測定する簡便な心理学的な尺度の開発である。
 当然、開発される尺度は、短期間の時間の変化によって得点に大きな変化が生じない等の信頼性の検討、及び各下位領域尺度の構成概念の妥当性の検討を行い、今後さまざまな中学生の社会体験学習の効果測定及びプログラムの在り方の検討に必要な精度を目指した。
(2)研究U:「トライやる・ウィーク」の効果測定
 また、開発された尺度を用いて、今年度に実施された「トライやる・ウィーク」体験前後の比較を行い、「トライやる・ウィーク」体験による中学生の変化(効果)を明らかにすることを目指した。
(3)研究V:家庭での話し合い程度と「トライやる・ウィーク」の効果の検討
 さらに、「『地域の教育力』は『家庭の教育力』との結びつくことによって、中学生の社会体験を一層豊かにする」との仮説のもとに、「トライやる・ウィーク」体験期間中に「体験を親子でよく話し合った群」、「体験を親子でまあまあ話し合った群」、「体験を親子であまり話し合わなかった群」の3群に分け、各群の体験事前事後の得点変化比較を行うことによって、仮説の検証を目指した。

3 研究T:中学生用「社会体験学習」効果測定尺度の作成
(1)方法
@予備質問項目の抽出

 平成10年6月に、「トライやる・ウィーク」を先行実施した中学2年生に対し、心の教育総合センターでは、「自己効力感」「勤労観」等の心理学的質問紙による調査研究を行った。結果については上地安昭11)に詳しいが、その際同時に行ったアンケート調査で「体験をとおして特に感じたこと、気づいたこと」についての自由記述を求めた。この自由記述をもとに、「同様の回答が3名以上見られること」「教職経験15年以上の教職経験者が、中学生の社会体験後の感想として妥当であると認めたもの」を条件に、予備質問項目の抽出を行ない、31の予備質問項目を抽出した。
 調査対象者:中学2年生 県下7校、665名(男子351名、女子314名)。
A項目分析・因子分析
 平成11年6月に「トライやる・ウィーク」を体験した中学2年生に対し、体験事前調査として@により作成した31予備質問項目を5件法(「非常によくあてはまる」から「まったくあてはまらない」の5つの選択肢法)によって実施し、事前調査のデータをもとに項目分析を行い、弁別力のある質問項目に関して因子分析を行った。
 調査対象者:中学2年生 兵庫県下7地域(神戸、阪神、丹有、東播磨、西播磨、但馬、淡路)の7校、834名(男子397名、女子437名)。
B信頼性・妥当性の検討
 Aと並行して、Aの項目分析・因子分析によって質問項目として適切と見なされた質問項目について、「トライやる・ウィーク」を実施しない国立大学附属中学2年生に実施し、約2週間の時期をおいた再テスト法によって信頼性の検討を、因子分析結果によって得られた各因子の構成概念に類似すると思われる心理学的質問紙を同時実施することによって、下位因子の併存的妥当性を検討する。
 調査対象者:国立大学附属中学校2年生、1校、 105名(男子45名、女子60名)。

(2)結果と考察
@結果
ア 質問項目の抽出

 3の(1)の@の方法に基づいて抽出された予備質問項目(31項目)を表1に示した。


表1 予備質問項目と項目分析結果

予備質問項目番号 項目内容 平均値 標準偏差 平均+標準偏差 平均−標準偏差 採択
1 私の身近には、さまざまな人がいると思う。 4.49 .72 5.21 3.78 不可
2 親(父母など)は毎日働いて大変だ。 4.39 .80 5.18 3.59  
3 世の中の人は助け合って生きている。 3.65 1.03 4.68 2.62  
4 みんなで協力することは大切だ。 4.34 .82 5.17 3.52  
5 いらない仕事などなく、どの仕事も社会に役立っていると思う。 3.50 1.14 4.65 2.36  
6 おとなは、どんなにつらい仕事でもがんばっている。 3.64 1.06 4.70 2.58  
7 私たちのまわりで、いろいろな人たちが一生懸命がんばっている。 4.07 .87 4.94 3.20  
8 親(父母など)の苦労がわかる気がする。 3.92 .94 4.86 2.98  
9 世の中は、たくさんの人の協力で成り立っている。 3.90 .94 4.83 2.96  
10 あいさつはとても大切だ。 4.40 .87 5.27 3.53 不可
11 職場などで働いている人たちの責任分担はきびしいものだと思う。 4.00 .88 4.89 3.12  
12 働くことはきびしいけれど、楽しいこともあると思う。 4.31 .85 5.15 3.46  
13 どんな仕事をしていても、働くことは大変だと思う。 4.12 .98 5.11 3.14  
14 私の住んでいる地域社会には、あまり関心がない。 3.12 .92 4.04 2.19  
15 家族のはげましは、ありがたいものだと思う。 4.00 .98 4.98 3.02  
16 社会のしくみは複雑だ。 4.04 1.02 5.06 3.02  
17 職場などでは、みんなが協力して支え合ってがんばっていると思う。 3.90 .93 4.82 2.97  
18 働いている人は、それぞれに誇りを持って働いていると思う。 3.56 1.04 4.60 2.53  
19 おとなは生活のために、一生懸命働いている。 4.31 .82 5.13 3.49  
20 私たちのまわりのおとなたちは、けっこうやさしいと思う。 3.41 1.07 4.36 2.22  
21 親(父母など)はとても苦労して、お金をかせいでくれている。 4.45 .74 5.18 3.71  
22 社会はきびしいものだ。 4.40 .61 5.21 3.60 不可
23 職場などでは、責任分担はきびしくても、仲良く働くことが必要だ。 4.19 .86 5.07 3.31  
24 働くことは気持ちがいい。 3.29 1.07 4.36 2.22  
25 働いている人は、難しいことでも最後まできちんとやり通している。 3.65 1.04 4.69 2.62  
26 私は、家族に支えてもらっていると思う。 4.27 .86 5.16 3.39  
27 人は一人じゃない、必ずだれかが支えてくれていると思う。 4.18 .98 5.16 3.39  
28 おとなは、自分の仕事に責任を持ってがんばっていると思う。 4.07 .89 4.96 3.18  
29 私は、家族に対してやさしく接してあげたいと思う。 3.88 .98 4.86 2.91  
30 職場などでは、声を大きくテキパキと行動することが大事だ。 4.27 .92 5.19 3.35 不可
31 将来つきたい職業や、そのために必要な進路について考えることは大事だと思う。 4.43 .84     不可

イ 項目分析・因子分析
 また、3の(1)のAの方法に基づいて行われた項目分析の結果を表1に示した。平均+標準偏差が5.19以上であり、かつ平均−標準偏差が1.19以下の予備質問項目は、質問項目の弁別力がない(ほとんどの被験者の反応が同じであり、差が生じない)ものとして不採用とした。
 尺度の因子構造を明らかにするために、不採用となった5項目を除く26の予備質問項目に対する反応間の相関行列に基づく因子分析(主因子解−バリマックス回転)を行った。その結果を表2に示した。因子負荷量が.515以上で、他の因子領域での負荷量が.478を超えないことを条件に解釈可能な3因子、18項目を採択した。


表2 因子分析結果(主因子解−バリマックス回転による)

予備質問項目番号 項目内容 第1因子負荷量 第2因子負荷量 第3因子負荷量
6  おとなは、どんなにつらい仕事でもがんばっている。 .697 .085 .286
25 働いている人は、難しいことでも最後まできちんとやり通している。 .675 .227 .086
7 私たちのまわりで、いろいろな人たちが一生懸命がんばっている。 .632 .180 .244
18 働いている人は、それぞれに誇りを持って働いていると思う。 .608 .344 .105
28 おとなは、自分の仕事に責任を持ってがんばっていると思う。 .564 .155 .438
5  いらない仕事などなく、どの仕事も社会に役立っていると思う。 .543 .263 .009
17 職場などでは、みんなが協力して支え合ってがんばっていると思う。 .541 .462 .154
13 どんな仕事をしていても、働くことは大変だと思う。 .502 .132 .227
19 おとなは生活のために、一生懸命働いている。 .475 -.168 .434
11 職場などで働いている人たちの責任分担はきびしいものだと思う。 .448 .096 .197
27 人は一人じゃない、必ずだれかが支えてくれていると思う。 .147 .654 .232
24 働くことは気持ちがいい。 .188 .623 .100
4 みんなで協力することは大切だ。 .297 .591 .180
9 世の中は、たくさんの人の協力で成り立っている。 .421 .565 .105
3 世の中の人は助け合って生きている。 .341 .515 .073
12 働くことはきびしいけれど、楽しいこともあると思う。 .197 .476 .092
23 職場などでは、責任分担はきびしくても、仲良く働くことが必要だ。 .399 .444 .062
20 私たちのまわりのおとなたちは、けっこうやさしいと思う。 .333 .400 .223
16 社会のしくみは複雑だ。 .105 .228 .084
14 私の住んでいる地域社会には、あまり関心がない。 .073 -.169 -.008
21 親(父母など)はとても苦労して、お金をかせいでくれている。 .304 .094 .696
2 親(父母など)は毎日働いて大変だ。 .198 .053 .690
8 親(父母など)の苦労がわかる気がする。 .203 .167 .677
15 家族のはげましは、ありがたいものだと思う。 .092 .456 .640
29 私は、家族に対してやさしく接してあげたいと思う。 .079 .469 .588
26 私は、家族に支えてもらっていると思う。 .126 .478 .564

                    各イタリック部分は採択された項目を示す。

 第1の因子(7項目)は、「おとなは、どんなにつらい仕事でもがんばっている」「働いている人は、難しいことでも最後まできちんとやりとおしている」など、働くことや勤労の大切さを表しており、「勤労観」の因子と解釈された。
 第2の因子(5項目)は、「人は一人じゃない、必ずだれかが支えてくれていると思う」「働くことは気持ちがいい」「みんなで協力することは大切だ」など、社会的連帯や社会的協調の大切さを表しており、「社会的協調」の因子と解釈された。
 第3の因子(6項目)は、「親(父母など)はとても苦労して、お金をかせいでくれている」「家族のはげましはありがたいものだと思う」など、家族の大切さや社会生活をおくる上での家族の役割の大切さを表しており、「家族のきずな」の因子と解釈された。
 表3に3の(1)のAの対象者834名(男子397名、女子437名)の本尺度の下位領域ごと及び合計得点の平均値と標準偏差を示した。また、図1に、採用された18項目の合計得点の度数分布を示した。図1からも明らかなように、合計得点は幾分高得点に偏っているものの、極端な偏りはなく、正規曲線に近い分布を示していることがわかった。

表3 中学生用「社会体験学習」効果測定尺度の各下位領域及び合計得点の平均値と標準偏差(N=834)

  勤労観 社会的協調 家族のきずな 合計
平均値 26.39 19.36 24.91 70.67
標準偏差 4.94 3.46 3.90 10.52
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図1 本尺度合計得点分布


ウ 信頼性・妥当性の検討
 信頼性の検討

 再テスト法による信頼性係数は、合計得点で、γ=.784であり、各下位因子領域においては「勤労観」ではγ=.646、「社会的協調」ではγ=.721、「家族のきずな」ではγ=.714であった(N=88)。
 さらに折半法(奇偶法)によるスピアマン・ブラウンの公式を算定したところ、γ=.914であった。
 これらの結果から、本尺度は短時間の時間的要因による変動は少なく、安定性を有する尺度であり、内的整合性も信頼できるものと考えられた。


 妥当性の検討
 表4に、本尺度の合計得点及び各下位領域得点と併存的妥当性を検討するために合わせて実施した心理学的質問紙の合計得点との相関係数(ピアソンの積立相関係数)を示した。本尺度の「勤労観」得点は、小林7)の「中学生用勤労観短縮版」尺度合計得点との相関係数を示した。同様に「社会的協調の因子」得点は、横塚怜子12)の「向社会的行動尺度(中・高校生版)」得点との相関係数を示した。「家族のきずな」得点は森下正康13)の「子どもの親に対する親和性尺度」の下位領域尺度である「親密さ尺度」得点との相関係数を示した。森下13)の「親密さ尺度」の質問項目は、「あなたは、おとうさんと気持ちが通じあっていると思いますか」等、具体的に「父」「母」との関係を問うものが多く、教育的配慮の観点から、「保護者」を主語にしたことを付記しておきたい。
 また、本尺度合計得点は、伊藤6)の「個人志向性・社会志向性」尺度の「社会志向性」得点との相関係数を求めた。本尺度合計得点の構成概念が、伊藤6)のいう「社会志向性」の発達の1側面であると考えたからである。結果を表4に示した。


表4 中学生用「社会体験学習」効果測定尺度の下位領域得点及び合計得点と各尺度得点との相関係数 (N=93)

  「勤労観」 「社会的協調」 「家族のきずな」 合計得点
中学生用勤労観短縮版 .663***      
向社会的行動尺度   .320**    
親密さ尺度     .754***  
社会志向性       .694***

                        *p<.05 **p<.01 ***p<.001
(注  * は95%の確率で、 ** は99%の確率で、*** は99.9%の確率で相関があったといえる。)

A考察
 実際に社会体験学習に参加した中学生の感想に関する自由記述をもとにした予備質問紙を作成し、翌年の社会体験学習に参加した中学生の反応間の相関行列に基づく因子分析を行った。このことは、中学生用の社会体験用効果尺度作成の一つの手続きであるとともに、中学生が社会体験学習を通じて、どのような社会や社会生活に関する認知を、発達させる可能性があるかを構造的に明らかにしたものということができる。
 「勤労観」は、「トライやる・ウィーク」をはじめとする中学生の社会体験学習が、多くの場合「職場」あるいは「職業」体験として体験されることから当然の結果とも考えられる。
 文部省中央教育審議会答申2)も、第3章「地域社会の力を生かそう」において、「会社や工場での子どもたちの見学・体験活動を広げよう」と提唱しているが、このような「体験」による変化を意図してのことと思われる。
 抽出された質問項目としても「おとなは、どんなつらい仕事でもがんばっている」など、「消費者としてのおとな」や「余暇生活を営むおとな」ではなく、「職業人としてのおとな」に接することにより、「働くことの意義や価値、大変さ」などの社会認知の変化(発達)を測定できるものと思われる。
 「社会的協調」は、社会に生きるおとなたちの「協働」や「共生」の姿を反映しているものと考えられる。「みんなで協力することは大切だ」「人は一人じゃない、必ずだれかが支えてくれていると思う」などの質問項目は、実際に体験学習の感想として得られたものをもとにしており、少なくとも「トライやる・ウィーク」を体験した中学生を受け入れた職場や事業所の多くが、このような中学生に対する「教育力」を有しているものと考えられる。
 中学生が、社会体験学習において、成熟したさらに共生的なおとなの人間関係のモデルに接することは、きわめて重要なことであり、この尺度は、このような体験学習を通じて対人関係等社会生活への認知の変化(発達)を測定できるものと思われる。
 「家族のきずな」は、「親(父母など)は、とても苦労をしてお金をかせいでくれる」など、職場等での社会体験を通じて自らの「親(父母など)」の日々の労働の意味を実感的に認知したり、「家族のはげましは、ありがたいものだと思う」等、社会体験を通して家族の意義や意味を体験的に認知する質問項目からなる。
 中学生が、このような観点から最も身近な基礎的社会集団である「家族」を見直すことは重要であり、文部省中央教育審議会答申2)も、第3章「地域社会の力を生かそう」において、「職場見学の機会を拡大し、働く父母の姿を見せよう」と提唱しているが、このような「体験」による変化を意図しているものと思われる。この尺度は、このような体験学習を通じて家族という基礎的社会集団への認知の変化(発達)を測定できるものと思われる。
 また、尺度の信頼性に関しては、短時間の変化という時間的要因に対しても、変動性が少なく、内的整合性も十分な尺度であると思われる。
 また、「社会的協調」得点と「向社会的行動尺度」との相関が幾分低いものの、意識レヴェルと行動レヴェルの違いも勘案すれば、表4の結果から、本尺度及び本尺度の下位領域の構成概念の解釈は妥当なものと考えられる。

4 研究U:「トライやる・ウィーク」の効果測定
(1)方法

 「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」の体験実施前後の変化(効果)を調べるため、平成11年6月に調査実施した31項目の質問項目のうち、3 研究Tで検討された本尺度18項目について、次のように分析を行った。本尺度の各中学校(7校)のクラス(36クラス)男女ごとの事前・事後の合計得点の平均値をサンプルとして、事前・事後の時期(2)×性(2)の2要因分散分析を行った。この体験による変化(効果)及びその性差を考察するためである。また、クラスの平均値をサンプルとして分析に用いたのは、分散分析という分析手法のサンプル数として適切であると思われたからである。

(2)結果と考察
@結果

 以下、ア「勤労観」イ「社会的協調」ウ「家族のきずな」の分析結果を、エにおいて、本尺度の「合計得点」の分析結果を記した。いずれも各質問項目は5件法(5点満点)「勤労観」は7項目35点満点、「社会的協調」は5項目25点満点、「家族のきずな」は6項目30点満点、「合計得点」は18項目90点満点である。
ア「勤労観」

表5 時期・群ごとの「勤労観」の各クラスの平均合計得点の平均値と標準偏差(S.D.)

時期
事前実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 26.31( 1.47)
女子(N=36) 平均(S.D.) 26.46( 1.80)
事後実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 27.74( 1.80)
女子(N=36) 平均(S.D.) 28.89( 1.86)

表6 「勤労観」合計得点の分散分析結果

  SS df MS
A(時期) 133.27 1 133.27 124.80 ***
B(性) 15.27 1 15.27 3.10
A*B 8.89 1 8.89 8.32 **
Total 577.34 143      

†p<.10 *p<.05 **p<.01 ***p<.001
† は90%の確率で変化があったといえる。
* は95%の確率で変化があったといえる。
** は99%の確率で変化があったといえる。
*** は99.9%の確率で変化があったといえる。
                 (以下同じ)
 表5に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「勤労観」得点の男女別の平均値と標準偏差、さらに体験の事後における男女ごとの平均値と標準偏差をあらわした。表6は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。
分散分析結果を見ると、時期×性の交互作用が有意であることがわかる(時期によって男女間に変化のパターンの違いが見られること)。
 そこで、各要因の単純主効果を分析したところ、時期の単純主効果では、男女ともに有意な変化がみられた{男子:F(1,70)=34.34,p<.001、女子:F(1,70)=98.79,p<.001}。一方、性の単純主効果では、事前においては有意な男女差が見られなかったが、事後において、有意な男女差{男子=27.74<女子=28.89:F(1,140)=23.72,p<.01}が見られることがわかった。
イ「社会的協調」
 表7に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「社会的協調」得点の男女別の平均値と標準偏差、さらに体験の事後における男女ごとの平均値と標準偏差をあらわした。表8は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。
分散分析結果を見ると、時期×性の交互作用が有意であることがわかる。
 そこで、各要因の単純主効果を分析したところ、時期の単純主効果では、男女ともに有意な変化がみられた{男子:F(1,70)=60.41,p<.001、女子:F(1,70)= 118.08.06,p<.001}。性の単純主効果では、事前においても有意な男女差{男子=18.83<女子=19.76:F(1,140)=11.04,p<.005}が見られたが、事後においても、有意な男女差{男子=19.96<女子=21.35:F(1,140)=24.20,p<.001}が見られることがわかった。

表7 時期・性ごとの「社会的協調」の各クラスの平均合計得点の平均値と標準偏差(S.D.)

時期
事前実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 18.83( 1.28)
女子(N=36) 平均(S.D.) 19.76( 1.20)
事後実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 19.96( 1.06)
女子(N=36) 平均(S.D.) 21.35( 1.17)

表8 「社会的協調」合計得点の分散分析結果

  SS df MS
A(時期)   66.29 1 66.29 173.70 ***
B(性)   48.60 1 48.60 19.59 ***
A*B    1.83 1 1.83 4.79 *
Total 317.08 143      

†p<.10 *p<.05 **p<.01 ***p<.001

表9  時期・性ごとの「家族のきずな」の各クラスの平均合計得点の平均値と標準偏差(S.D.)

時期
事前実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 26.31( 1.47)
女子(N=36) 平均(S.D.) 26.46( 1.80)
事後実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 27.74( 1.80)
女子(N=36) 平均(S.D.) 28.89( 1.86)

表10 「家族のきずな」合計得点の分散分析結果

  SS df MS
A(時期) 133.27 1 133.27 124.80 ***
B(性) 15.27 1 15.27 3.10
A*B 8.89 1 8.89 8.32 **
Total 577.34 143      

†p<.10 *p<.05 **p<.01 ***p<.001

ウ「家族のきずな」
 表9に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「社会的協調」得点の男女別の平均値と標準偏差、さらに体験の事後における男女ごとの平均値と標準偏差をあらわした。表10は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。
分散分析結果を見ると、性差にその傾向(男子=24.94<女子=25.48)があり、時期の主効果が有意であることがわかる。
このことは、女子は事前においても事後においても男子よりも高得点傾向にあるが、男女ともに事後において有意に得点を増加させていることを示している。
エ「合計得点」
 表11に、「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」体験の事前における「合計得点」の男女別の平均値と標準偏差、さらに体験の事後における男女ごとの平均値と標準偏差をあらわした。表12は、これらの分散分析結果をあらわしたものである。
分散分析結果を見ると、時期×性の交互作用が有意であることがわかる。

表11  時期・性ごとの「合計得点」の各クラスの平均合計得点の平均値と標準偏差(S.D.)

時期
事前実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 69.86( 3.17)
女子(N=36) 平均(S.D.) 72.89( 3.23)
事後実施 男子(N=36) 平均(S.D.) 71.39( 3.96)
女子(N=36) 平均(S.D.) 75.99( 4.04)

表12 「合計得点」の分散分析結果

  SS df MS
A(時期) 524.14 1 133.27 124.80 **
B(性) 193.09 1 193.09 8.05 ***
A*B 22.27 1 22.27 6.65 *
Total 2652.43 143      

†p<.10 *p<.05 **p<.01 ***p<.001

 そこで、各要因の単純主効果を分析したところ、時期の単純主効果では、男女ともに有意な変化がみられた{男子:F(1,70)=49.30,p<.001、女子:F(1,70)=113.80,p<.001}。性の単純主効果では、事前においても有意な男女差の傾向が{男子=69.86<女子=72.89:F(1,140)=3.08,p<.10}見られたが、事後においても、有意な男女差{男子=71.39<女子=75.99:F(1,140)=12.68,p<.001}が見られることがわかった。
A考察
 結果からも明らかなように、本尺度の「合計得点」及び「勤労観」「社会的協調」「家族のきずな」の三下位領域すべてにおいて、「トライやる・ウィーク」体験の事後得点が事前得点に比して有意に増加したことが示された。
このことは、本研究で開発された尺度の切り口で見る限り、「トライやる・ウィーク」は、中学生の勤労観、社会的協調性、家族に関する見方を有意に変化させる体験であり、社会体験学習として効果のある内容であることが実証されたことを示している。今後、一層精密な調査研究とするためには、調査時期に「トライやる・ウィーク」に参加しない中学生群(比較群)の変化との対比など、一層緻密な要因計画による研究も必要となろうが、昨年度より手探りの状態でスタートした「トライやる・ウィーク」が、今後一層充実した社会体験学習として定着するために、今後の課題や問題点をあげておきたい。
まず第1に、本調査研究において見出された「性差」の問題である。
 既に、結果で述べたように、本尺度の二つの下位領域及び合計得点の分散分析において、性差が見られた。合計得点の性差は、下位領域の性差を反映したものと考えられる。下位領域の分析において、男女ともに事後において有意な得点増加が見られたが、男子以上に女子の方が高得点であった。
すなわち、「勤労観」の交互作用の分析結果から、体験事前においても女子の方が高得点であったが有意な差ではなかったが、事後においては有意な差が認められた。このことは、「トライやる・ウィーク」の体験が、勤労観の発達の観点から見れば、男子以上に女子において効果的であったことを示している。
また、「社会的協調」の交互作用の分析結果からは、体験事前において女子が男子より有意に得点が高く、事後においてはさらにその差が広がっていることが認められた。このことは「勤労観」の分析結果同様、これらの社会体験が女子に効果的であったことを示している。
一方、「家族のきずな」においては、男子より女子が総体的に高得点である傾向がみられたに過ぎなかった。一般に、多くの先行研究が小学生や中学生期において女子は男子以上に親和的であり、家族や親に対しても親密であるとしている(例:森下13))。したがって、「家族のきずな」における性差の傾向は、一般的な性差と考えられる。問題は、「勤労観」及び「社会的協調」の性差である。
平成10年度の調査をもとにした小林8)の研究結果も古田・住本9)の研究結果も女子が男子以上に高得点であり、男子以上に有意な得点増加を示していることを指摘している。

表13 体験内容別各群の本尺度平均値の変化

N=834 生産 サービス 保育 病院・医療 福祉 文化 公共 その他
N=100 N=301 N=144 N=31 N=46 N=60 N=134 N=9
♂=80 ♂=167 ♂=12 ♂=6 ♂=10 ♂=29 ♂=85 ♂=8
♀=29 ♀=134 ♀=134 ♀=25 ♀=36 ♀=31 ♀=49 ♀=1
勤労観 1.98 1.89 2.68 2.03 3.15 1.27 1.53 1.33
社会的協調 1.34 1.31 1.73 1.39 1.91 1.28 1.12 -1.10
家族のきずな .47 .52 1.13 .29 1.02 -1.7 .43 .56


 表13は、平成11年度の「トライやる・ウィーク」体験調査対象者834名の体験内容別の本尺度の下位尺度得点の平均点の変化(事後得点平均値−事前得点平均値)を表したものである。これを見ると、事後において得点増加の大きかった体験内容の中に女子の占める割合の大きいことがわかる。「トライやる・ウィーク」は、地域の協力を得て社会体験学習として成り立っている。しかし、これらの地域の善意による社会
体験学習の場の提供は、従来女性の職場進出も多く、また女性の特性を生かせる職場であることが多い。例えば、医療機関において、将来医師として働きたい志望を有する男子生徒も、看護婦志望である女子生徒も、用意される体験内容は「介護補助体験」や「看護補助体験」の場合が多い。また、例えば幼稚園や保育園を男子生徒が希望しても、自らの「モデル」たりうる同性の「保父」等がいる職場はきわめて少ない。このような傾向が、本尺度における性差として反映したのではないかと推測される。
今後、地域社会との一層の交流を図りながら、特に男子生徒の体験内容を検討する必要があろう。また、学校にあっては、古田・住本9)も指摘するように、今後「トライやる・ウィーク」を啓発的体験学習の観点からもとらえ返し、学校における進路指導、特に職業的発達や進路成熟の観点からの位置づけを行う必要もあるものと思われる。


5 研究V:家庭での話し合い程度と「トライやる・ウィーク」の効果の検討
(1)方法

 3 研究Tの(1)のAの調査対象者(4 研究Uの調査対象者と同じ)に、体験事後調査時に並行してアンケート「体験学習中に、保護者(父母など)と、体験学習のことについて話し合いましたか」の質問を行い「よく話した」「まあまあよく話した」「あまり話さなかった」の3選択肢からの回答を求めた。各回答群ごとの(1)の手続きによって、適切と見なされた18質問項目の得点差を検討することを通じて、家庭の教育力と中学生の社会体験学習の効果の差を検討した。

(2)結果と考察
@結果

「体験学習中に、保護者(父母など)と、体験学習のことについて話し合いましたか」の質問を行い「よく話した」「まあまあよく話した」「あまり話さなかった」の3選択肢からの回答を求めた。各回答を選んだ者をそれぞれの群とした。
 表14に、平成12年度6月「トライやる・ウィーク」を体験した834名の群別の体験事前事後の本尺度得点の変化(事後得点−事前得点)を示した。

表14  体験学習中、親(父母など)と話し合ったかによる群分けと各群の本尺度平均値の比較

N=834 よく話した群 まあまあよく話した群 あまり話さなかった群
N=285 N=412 N=137
事前得点 事後得点 変化 事前得点 事後得点 変化 事前得点 事後得点 変化
勤労観 27.52 29.85 2.32 26.21 28.24 2.03 24.60 25.88 1.28
社会的協調 20.55 22.01 1.47 19.06 20.50 1.45 17.82 18.78 .96
家族のきずな 26.39 27.20 .80 24.62 25.12 .50 22.74 23.06 .32

注)変化とは、事後得点−事前得点で求めた体験による得点の増加である。

A考察
 結果における表14からも明らかなように、「トライやる・ウィーク」の体験期間中、親子でよく話し合った群ほど得点の増加率が高い。「トライやる・ウィーク」は、学校が地域の教育力の協力を得て実施される社会体験学習である。その成果は既に見てきたとおりであるが、中学生の成長や発達のベースとなるのは、当然家庭の教育力であり、この教育力を抜きにして中学生の成長や発達は語れないことを、この結果は示していると思われる。
今後、家庭においてもこれらの結果を踏まえた対応が望まれるが、学校においてもこれらの結果を踏まえ、より積極的な家庭に対する働きかけが望まれる。中学生の成長や発達への支援をすべて中学校が抱え込もうとするのではなく、地域の協力に委ねるべきは委ね、家庭に委ねるべきは委ねたり、啓発すべきは地道なそしてねばり強い啓発活動をおこなうべきであろう。
 学校と家庭と地域社会の教育力の連携、言葉で言うのは簡単だが、このようなねばり強い連携作業が、今何よりも求められているのであろう。

終わりに
 文末とはなったが、今回の調査に際し、取組の忙しい中を調査にご協力いただいた各中学校および中学生のみなさんに、心からお礼を申し上げます。みなさんのご協力が今後の「トライやる・ウィーク」の一層の充実となることをともに願いたいと思います。
また、ご指導いただいた当センターの上地安昭所長(兵庫教育大学教授)、冨永良喜主任研究員(兵庫教育大学教授)、そして膨大なデータのコンピューターへの打ち込みに協力いただいた兵庫教育大学の大学院生西悟史さん、月岡万里子さんに心からお礼を申し上げます。


引用文献
1) 心の教育緊急会議 「心の教育の充実に向けて」 (1997)
2) 中央教育審議会答申(1998)  
3) 古田猛志・小林宏 「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』の教育的効果に関する一考察−中学生の生きる力をどのように育んだか−」(1999)兵庫県立教 育研修所研究紀要第110集
4) 桜井茂雄 「自己効力感が学業成績に及ぼす影響」 教育心理研究vol.35-2(1987)
5) 伊藤美奈子 「個人志向性・社会志向性尺度の作成および信頼性妥当性の検討」 心理学研究vol.64(1993)
6) 岡田忠義 「高校生の勤労観の変容に関する研究」 兵庫教育大学大学院昭和63年度修士論文(1988)
7) 小林宏 「中学生用勤労観短縮版尺度作成の試み」 (2000)「発達心理臨床研究(兵庫教育大学学校教育 学部附属発達心理臨床研究センター紀要)」vol.7
8) 小林宏 「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』の教育的効果に関する一考察−中学生の生きる力をどのように育んだか−」(1999) 日本教育心理学会第111回総会発表論文集
9) 古田猛志・住本克彦 「進路指導としての『トライやる・ウィーク』に関する一考察」(別掲)兵庫県立教育研修所研究紀要第111集
10) 上地安昭「『トライやるウィーク』は中学生の心をどう変えたか」(1998) 「兵庫教育」平成10年 9月号
11) 横塚怜子 「向社会性尺度(中高生版)作成の試み」(1989) 教育心理学研究 vol.37
12) 森下康正 「児童の親に対する親和性の因子構造と尺度の作成」(1983) 和歌山心理研究会編

資料(Appendix)────────────────────────────────────────────
「中学生用社会体験学習効果測定尺度」質問項目

1 親(父母など)は毎日働いて大変だ。
2 世の中の人は助け合って生きている。
3 みんなで協力することは大切だ。
4 いらない仕事などなく、どの仕事も社会に役立っていると思う。
5 おとなは、どんなにつらい仕事でもがんばっている。
6 私たちのまわりで、いろいろな人たちが一生懸命に働いている。
7 親(父母など)の苦労がわかる気がする。
8 世の中は、たくさんの人の協力で成り立っている。
9 家族のはげましは、ありがたいものだと思う。
10 職場などでは、みんなが協力して支え合ってがんばっていると思う。
11 働いている人は、それぞれに誇りをもって働いていると思う。
12 親(父母など)はとても苦労して、お金をかせいでくれている。
13 働くことは気持ちがいい。
14 働いている人は、難しいことでも最後まできちんとやりとおしている。
15 私は、家族に支えてもらっていると思う。
16 人は一人じゃない、必ずだれかが支えてくれていると思う。
17 おとなは、自分の仕事に責任をもって、がんばって働いていると思う。
18 私は、家族に対してやさしく接してあげたいと思う。

選択肢
  5:非常によくできる
  4:かなりあてはまる
  3:どちらともあてはまる
  2:ほとんどあてはまらない
  1:まったくあてはまらない
 
注)4,5,6,10,11,14,17の項目が「勤労観」 2,3,8,13,16の項目が「社会的協調」 1,7,9,12,15,18の項目が「家族のきずな」の項目である。逆転項目はない。「非常によくあてはまる」を選んだ場合に5点、以下順に「まったくあてはまらない」を選んだ場合を1点として採点する。